「自然再生事業指針」検討合宿

川崎グランドホテル4階の会議室にて。あと20分で、「自然再生事業指針」検討合宿がスタートする。液晶プロジェクターのセットアップも完了。あとは12時に参加者が揃うのを待つばかりである。

会議の最初に使うパワーポイントのスライド3枚を用意した。そのうち1枚は、「建設的な議論のためのお願い」と題するもの。次の3項目をあげている。

(1)科学的命題と価値的命題を区別する。
(2)・・・はおかしい、という批判だけでなく、具体的な修正案を提案する。
(3)二項対立(二分法)を回避する。

自然環境の保全や、自然再生に関連する問題は、論理や実証によって、正しいか、間違っているかを、決められる問題ばかりではない。何らかの価値観にもとづいて、良いか悪いかを判断する必要がしばしばある。このような価値的命題を、「正しいか、間違っているか」という科学的命題(客観的命題)と混同すると、議論は混乱する。この区別は、保全の現場のみならず、科学者の会議の場でも、重要である。

また、科学者はともすれば、批判するだけに終わりがちである。研究をめぐる討論なら、これでもかまわない。研究発表の論理の甘さ、詰めの甘さに関する批判に対して対応するのは、批判された側の責任だ。しかし、みんなで合意文書をまとめる場合には、これでは困る。この合宿には、「指針案」を完成させるという目標がある。この目標達成のために、コメントはつねに具体的で、かつ建設的であってほしい。

最後に、「自然再生は可能か、不可能か」といった二項対立の議論を回避したい。このような問題の立て方(二分法)は、第三の選択肢がないかのような錯覚を与える点で、一種の詭弁である。少し考えてみれば、第三、第四の選択肢がある場合が多い。みんながこの点に注意すれば、多くの対立は回避できる。

参加者も揃ってきた。さて、どういう議論になるか、心配でもあり、楽しみでもある。