「質問票」の威力

生態学I」の講義を終えたところ。今回は、テキスト"Evolutionary Analysis"の8章に入るはずだった。この章は、量的遺伝学の手法と、その生態学への応用がテーマだ。この章に入る前に、入試で生物学を選択していない学生がいることを念頭に置いて、メンデル遺伝学と集団遺伝学の初歩を解説した。「進化生物学夏の学校」のために作成したパワーポイントがあったので、これを使えば、わかりやすく説明できると思っていた。

しかし、やってみると、ダメだった。対立遺伝子頻度と遺伝子型頻度の違いから、きちんと説明しないと、多くの学生にはわからないのだ。時間的制約を考えれば、メンデル遺伝学抜きで、量的遺伝のグラフィック・イメージだけで説明したほうが、かえって良かったかもしれない。

今回は、小早川さんにならって、授業を10分ほど早くきりあげて、「質問票」に質問を書いてもらった。小早川さんは、「質問票」に学生が書いた質問に対して、ウェブ上の細胞生物学講義ノートで、ていねいに回答されている。すごい。私も真似をしてみることにした。

そして、回収された「質問票」を読んで、かなり打ちのめされた。私としては懇切丁寧に説明したつもりだったが、多くの学生にはわからなかったのだ。「進化生物学夏の学校」で、「わかりやすかった」と評価されたスキルが、通用していない。「進化生物学夏の学校」の受講生は、学生であれ、高校の先生であれ、「進化生物学」について理解したいという意欲が高かった。生物学科の学生全体を相手にする講義では、そうはいかないのである。

次回の講義までに、「質問票」に書かれた質問全体に答えるのは、並大抵ではない。しかし、やれるだけ、やってみよう。

講義には、毎回工夫してのぞむ。そのため、毎年、授業の組み立てを少しづつ変えている。その結果、かえって失敗することもある。今回は、予備知識の解説のつもりで加えた内容で、かえっててこづってしまった。