これからの進化生態学

盛岡に向けて研究室を出る直前に、共立出版から本が届いた。昨年の福岡大会では、2000人規模の大会の準備・運営に忙しくて、本の紹介をする余裕がなかった。今年は生態学会大会にタイミングをあわせて出版された本を紹介したい。参加者のみなさんに少しでも本を買っていただけばと願っている。

これからの進化生態学生態学と進化学の融合
Discovering Evolutionary Ecology: Bringing Together Ecology and Evolution
Peter Mayhew著 
江副日出夫・高倉耕一・巌圭介・石原道博訳
共立出版
ISBN:978432005617
4200円+税

意欲的なタイトルの本だ。「進化生態学」はもともと、自然淘汰の進化理論を生態学に適用することによって発展した学問である。しかし、その発展初期には、種分化、交雑、大進化、絶滅など、進化学が主要な研究対象としてきたテーマはほとんどとりあげられなかった。最近になって、これらのテーマに関する研究と、進化生態学の研究との間に「橋」がかかりつつある。本書は、このような状況認識の下で書かれた入門書である。ESSや血縁淘汰などの基礎理論についてはごく簡単な紹介にとどめ、どんなテーマが研究されているかについて紹介することに力点を置いている。したがって、大学1年生が「進化生態学」の研究の広がりに触れるには、良い入門書だと思う。ただし、「適応度」についての基本的な解説すらないので、基礎概念をしっかり学ぶためには、他の基礎的な教科書を読む必要がある。
第一章:進化学と生態学の接点−シクリッドの種分化を例に
第二章:主要な移行と性の進化
第三章:生物圏の進化と飛行の進化
第四章:生活史の進化
第五章:性比と性配分
第六章:移動分散と休眠の進化
第七章:植物の行動生態学
第八章:進化と個体群動態
第九章:ニッチの進化
第十章:相利共生
第11章:共進化
第12章:種の誕生
第13章:種の絶滅
第14章:大進化
第15章:マクロ生態学
第16章:進化生態学のめざすところ