メルトダウン

福島原発1-3号機でメルトダウンが起きていたことを東京電力が認めた。今日の新聞はこのニュースを一面トップで報じている。しかし、このことは関係者の間では、ほぼ常識だったと思う。水を注入しても水位が維持できず、燃料棒が露出する状況が長時間続いたのだから、メルトダウンが起きたと考えざるを得ないだろう。私は3月下旬にたまたま東電関連会社の技術者と話をする機会があった。そのとき、彼は私に、メルトダウンが起きていると明言した。
今は、メルトダウンが起きていたという過去の事実よりも、これからの対応を誤らないことが重要だ。福島原発は、まだ決して安心できる状況にはない。民主党自民党は、これからの対策について、より説得力のある提案を競い合うべきだ。しかし、国会の現状はこの理想からはほど遠く、寒い。政治がメルトダウンを起こしている。
自民党には、安全対策への批判(注)に答えずに、今日の事態を招いた責任がある。過去の過ちを率直に認め、今後の原発政策・エネルギー政策を国民に提案すべきだ。しかし、やっていることは、民主党のミスの揚げ足とりでしかない。
カン首相が、浜岡原発を停めた決断は評価できる。わが国の原発の中で、浜岡原発がもっとも危険な立地にあることは明白だ。もし自民党政府が続いていた場合、この浜岡原発を停める決断ができたかどうか、疑わしい。しかし、その他多くの案件の推移を見ると、カン首相の指導力は、かなり低いと言わざるを得ない。何よりも、この危機において、国民の心に届く言葉を語れていない。これは、国の指導者として、かなり致命的だ。
私は民主党自民党が歩み寄って連立政権を作り、新しい政治のあり方を模索してくれることを期待していた。この事態を招いた責任をとるには、それしか方法がないだろう。しかし残念ながら、国民に対する責任よりも、党利党略が優先し、連立政権は夢に終わった。自民党は、敵失で政権が戻ってくることを期待しているようだ。そんなだらしのないことで、責任ある政権が作れるのだろうか。
この状況を変えるのは、国民によるボトムアップの努力しかないだろう。幕末も、戦後もそうだった。
私は、市民・企業・科学者が協力して、複数の政策的選択肢を立案することが、この国を良くしていく近道ではないかと思う。政策立案を政府にも官僚にもまかせられないとすれば、国民がやるしかないのだ。
注:しばらく前に話題になったが、共産党吉井議員の国会質問は、福島原発の今回の事故をほとんど正確に予想していた(http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2011/03/2005-073-4f4d.html)。この質問が生かされず、何の対策もとられなかったのは、本当に悔やまれる。