福智山

昨日は、福岡県植物レッドデータブック見直し調査の一環として、福智山に出かけた。
福智山は北九州市八幡東区皿倉山から南に連なる山塊の最高峰であり、頂上は900mをわずかにこえる。照葉樹におおわれた山麓には3つの滝(白糸の滝、大塔の滝、七重の滝)があり、山地上部はイヌシデ、ヤマボウシなどからなる落葉樹林、そして山頂部はササとススキが優先する草原におおわれている。
私は福岡県に育ったのだが、福智山を訪問するのは初めてであった。白糸の滝から尾根道を通って頂上に登ったが、登山路はかなりの急斜面をまっすぐ登っており、ひさびさに筋肉痛になってしまった。
山麓照葉樹林内はかなり暗く、林床植物は貧困だったが、ウスギムヨウランを確認することができた。尾根道を登ると、やがて林床が明るくなり、林床の草本が多様さを増した。そこで、100mのトランセクトを設定し、参加した5名で林床の草本種を10m単位で調査した。この方法は、個体数の少ない希少種を発見するうえで、とても有効であり、この日も通常の踏査だけでは見過ごした可能性の高い希少種が見つかった。
山頂付近では、ツクシコゴメグサが記録されていたが、発見できなかった。草地は踏みつけによって雑草群落と化しており、クサイが優先し、オオバコやアメリカセンダングサが生えていた。ツクシコゴメグサは絶滅したものと思われる。
山頂を南東に下った鞍部の近くで、湿地の希少種が記録されていた。そこで鞍部まで下って湿地を探したが、見つからない。おそらく沢頭の湿地だろうと狙いをつけて藪こぎをした結果、湿地を発見したが、ほぼ全面がノイバラに覆われていた。サワギキョウ、サワオグルマ、アケボノソウ、リュウキンカなどの湿地植物がかろうじて残っているが、このままでは早晩消失するだろう。今なら、ノイバラを刈り払えば、湿地植生は回復すると思う。有志の協力を募って、湿地再生のための藪払い作業を計画したほうが良さそうだ。
今日は、自然再生ハンドブックの編集に取りかかったが、海外からの緊急の督促が届き、午後はそちらを優先した。まだ「負債」は多いが、ここしばらく「返済」に励んだ結果、一時より状況は大きく改善された。
残る主要な仕事は、自然再生ハンドブック、大学院生から預かっている3編の論文原稿、Climate conferenceでの生物多様性セッションの総括論文(今日、督促された原稿)、DIVERSITAS bioGENESISプロジェクトメンバーの共著論文。これらに続いて、絶滅リスク評価の論文など、片付けなければならない原稿は目白押しだが、いずれも生産的な仕事だ。