奇跡的な日

東大鷲谷研で打ち合わせ中に、熊本県知事が川辺川ダム計画白紙撤回を求める見解を県議会で発表したという大ニュースが飛び込んだ。歴史に残る決断だと思う。どのような代替治水対策をとるか、水没予定地の五木村振興策をどうするか、という問題はあるが、国を含む関係機関が真剣に考えれば、ダム以外の解決策は必ず見出せると思う。
私はダムの有効性をすべて否定するものではない。しかし、ダム建設の環境負荷はきわめて大きく、しかもミチゲーションがきわめて困難である。さらに、少しづつ計画を進めてみて、問題があればやめるという、「順応管理」ができない。作るか、作らないか、二者択一の判断を迫られる。したがって、ダム以外のオプションを十二分に検討し、明らかにダムが最適解だという判断が下せる場合以外は、ダムという選択肢を回避するほうが良いと考える。
夜は、御茶ノ水で食事。8時すぎにレストランを出てすぐに、屋久島のT夫妻に出会い、お互い仰天した。上京されるという事情を、屋久島関係者のMLで読んでいたので、東京に滞在されていることを知ってはいたが、まさか道端で出会うとは思わなかった。同じ道を反対側から歩み寄っている状況ならまだしも、互いの行程が直角にクロスする状態での、交差点での出会いだった。レストランを出る時間があと10秒早くても、10秒遅くても、出会わなかっただろう。確率がゼロでない限り、めったにないことが起きることはあるのだという好例である。屋久島にも世界遺産科学委員会を作る計画があることなどをMLで読んで、メールを書こうと思っていた矢先だったので、当面の課題について手短に意見交換できて、実に好都合だった。10月にシカ柵の調査を計画していることなどを伝え、分かれた。
屋久島は、世界自然遺産の指定を受けて以後、観光客だけでなく、島の人口も増え、経済的には発展している。シカ問題をはじめ、多くの課題があるが、それらを島民の力で解決していこうという取り組みが進んでいて、希望を感じる。
川辺川流域は、ダム建設をめぐる長年の係争の結果、住民の間にもさまざまな軋轢が生じていることと思う。しかし、すばらしい川の自然を残すという決断が下ったのだから、屋久島のように自然を生かした地域づくりの取り組みが、早く育つことを祈りたい。