プログレスミーティング用文書作成要領(試作品)
今年度から毎週火曜日を「プログレスミーティングの日」に決めて、大学院生・卒業研究生と面談している。共通の材料で研究しているメンバーの場合には、グループでミーティングを持っている。こうして教育にかなりの時間を割いているのだが、面談の際のレジメ(文書)がなかなか改善されない。読み手を意識せずに、自分のためのメモをそのままミーティング文書にしているケースが多い。
今日、Mさんに相談を持ちかけられたので、これを機会に「プログレスミーティング用文書作成要領」を作ろうと考えた。以下は、今日準備した試作品。今後、改良を重ねていきたい。
この文書は、プログレスミーティングをより有益なものにするために作成しました。
この文書で述べる内容は以下の3つです。
1. プログレスミーティングで何を話し合うか?
プログレスミーティングで討議する内容は、以下の2点です。
- (1)論文の問題設定・結論・結論に至る論理
- (2)実験・観察・データ解析の方法・手順・日程
(1)は研究の文書化作業です。研究計画に始まり、論文原稿完成をもって終了します。(2)は研究の進行管理です。
(1)と(2)は同時に進める必要があります。(2)が終わってから(1)にとりかかるのでは遅いのです。(2)が終わったときには、(1)も完成に近いのが理想です。
図(省略)
したがって、プログレスミーティングの文書は、論文の草稿を意図して作りましょう。
2. プログレスレポートをどう書けばよいか?
研究計画・プログレスレポート・論文原稿はすべて、コミュニケーションの手段です。これらの文書の目的は、あなたが考えたこと、あなたが調べたことを読み手に伝えることです。したがって、「わかりやすい」ことが必要です。
「わかりやすい」とはどういうことでしょうか。ひとことで言えば、「読み手の疑問に答える」ことです。読み手が文書を読むときには、さまざまな疑問を抱きます。これらの疑問にきちんと答えた文章は、わかりやすいのです。
わかりやすい文書作成には、以下の3ステップが必要です(文書では図解)。
- 文書の主題を明確にする。
- 文書の主題を説明するために最小限必要な知識を選ぶ。
- これらを論理的に順序づけて説明する。
これらはあらゆる文書作成に必要です。
「主題」とは、研究計画の場合には研究の目的、論文の場合には結論に対応するものです。プログレスレポートは両者の中間に位置します。そこでの主題は、「到達点と課題」です。したがって、「何がわかったのか、何が未解決なのか」を明確に提示することが必要です。
「主題を理解するために必要な知識」とは、研究の目的、研究の背景、関連する実験計画などです。あなたは文書を書くために多くの論文を読み、時間をかけて考えたでしょう。しかし、読み手はこのプロセスを経験していません。指導教官すら、あなたの知識をすべてカバーしていません。そのような相手にあなたの問題提起や疑問を理解してもらうには、「読み手の疑問に答える」ことに徹する必要があります。
「知識を論理的に順序づける」とは、読み手が理解しやすいように知識に順序を与えることです。読み手は多くの知識をいちどに理解することはできません。順序を追って理解します。知識を与えられる順序が論理的構造に従っていれば、格段に理解しやすくなります。
「論理的順序」とは、以下の4つのいずれかです。
- 時系列に沿った順序: 実験の方法→実験結果→問題点、など
- 構造を反映した順序: 地球レベル→日本レベル→地域レベル、など
- 類別項目の重要度順: 1番重要なもの→2番目に重要なもの→その他
- 演繹的論理の順番: 大前提→小前提→結論
上記のように、順序に図解を加えると、さらにわかりやすくなります。
たかがプログレスレポートを書くために、どうしてそこまでわかりやすさにこだわるのだろう? 指導教官なら大学院生の研究内容くらい把握しておいてほしい。そう考える人もいるかもしれません。
プログレスレポートを書くプロセスは、「わかりやすく書く技術」を磨くトレーニングだと考えてください。この技術を磨かなければ、論文は書けません。
「わかりやすく書く技術」・・・これは、大学院で学ぶことができる非常に重要な技術です。将来どんな職業についた場合にも、この技術は必ず役立つでしょう。
次に、わかりやすいプログレスレポート作成のために、構成の標準例を具体化してみましょう。(以下略)