総長選挙の判断材料(2)

一昨日は赤嶺候補の、昨日は有川候補の演説会に足を運んだ。
有川候補は、「アクティブな部門における人事凍結を即時に解除する」という方針を新たに提起された。また、「GCOE採択拠点に対する財政的・組織的支援」を行なう方針を提起され、GCOE申請を行う有力拠点への支援についても明言された。これらは、総長候補がそろって掲げるべき方針だと思う。しかし、これらの方針を明確にされたのは、私が知る限り有川候補だけである。3候補そろっての演説会の際に私が提起した問題に、応えていただいたという気がする。
有川候補は、発見科学という新しい分野を育てられた研究教育上の実績に加えて、図書館長としての実績や、移転担当理事としての実績も申し分ない。理学部出身であり、理学をふくむ基礎科学の重要性もよく理解されている。本来なら、理学研究院が推してしかるべき候補である。
しかし今回は、理学研究院長を中心に、現執行部、および研究院長・執行部経験者をふくむ10名が赤嶺候補の推薦人に署名した。私も理学研究院長の依頼に応じて署名をした一人なので、大きな責任がある。いったいなぜこのような事態が生じてしまったのだろう。
私に関して言えば、過去6年間、現執行部の学内行政に不満を鬱積させてしまった。私は批判的な発言はするが、つねに建設的であることを信条にしている。執行部には私なりに、可能な限りの協力をしてきた。にもかかわらず、九大に対する愛着が次第に薄れるのを感じてきた。厳しい人事凍結はそのひとつの理由だが、それだけではない。積もり積もったものがある。
現執行部で私が存じ上げている方々は、梶山総長をはじめとして、おひとりお一人はとても優れた方であり、九大を良くするために懸命に努力されてきたと思う。しかし、執行部全体のチームワークができていなかった。執行部内で心の通い合ったチームワークがなければ、九大全体でのチームワークがうまくいくはずがない。いきおい、構成員は職場において不満をためこむ結果となった。
そこで、赤嶺候補と有川候補には、総長に就任された場合に、どのように組閣をされ、チームワークを実現するかをお尋ねした。赤嶺候補からは、「矢原先生はどのようにすれば良いとお考えですか」と聞き返された。有川候補からは、これまでのようなことがないようにしたいという趣旨の回答があった。
赤嶺候補は、腰が低く、とても人柄の穏やかな方である。おそらく、強いリーダーシップで組閣をされることはないだろう。推薦人の中には、部局長や部局長経験者が何人もいらっしゃるので、それらの方々を配置した布陣になるのだろう。その結果、個性の強い方の間でうまくチームワークができないという事態が生じないか、それが心配だ。
有川候補は、現執行部の中で仕事をされてきたので、組閣には十分に配慮されるだろうと思うが、もうすこし具体的な方針を伺いたかった。
有川候補は、自信家だとお見受けする。その自信は、豊富な実績と確かな実力に裏付けられたものなので、容易には揺らがない。総長に就任されれば、強いリーダーシップを発揮されるだろう。しかし、強いリーダーシップはしばしば強い反発を生む。理に勝った運営を補う、違うタイプの方を片腕に据えることができれば、バランスがとれるのではないかと思う。
とにかく、不機嫌な職場は嫌だ。物事はトップダウンボトムアップのどちらかだけでうまくいくはずはない。両方をつないでもまだ足りない。組織を生き生きと動かすには、みんながやる気を出せるような運営が大切だ。
赤嶺候補は、多くの部局長・部局長経験者の推薦を受けた方なので、どんな方なのだろうと期待していた。写真ではこわもてに見えるが、お目にかかってみると、びっくりするほど温和な方である。九大という大きな組織を動かすには、人の心を動かすビジョンが必要なので、ぜひそれを語ってくださいとお願いした。
赤嶺候補が当選されれば、推薦をした者は、とても大きな責任を背負うことになると思う。