次期総長候補演説会報告

今日は、上京して都内で会議に出た後、九大に戻って次期総長候補演説会に出た。3人の候補の方々が15分づつ話されたあと、45分の討論時間がとられた。
講演の内容をメモしてアナウンスするつもりでいたが、3候補のウェブサイトに書かれている内容の説明が大半をしめたので、質疑の内容だけを紹介する。
赤嶺候補に対しては、研究業績が少ない、部局運営の実績が乏しいという厳しい批判があった。赤嶺候補の回答は、「立場が人を作る。総長になれば、みんなと相談してしっかりやる」というものだった。
また、「経費を節約して予算を捻出するというが、具体的にどのような経費を削ってどれだけの予算を捻出できるのか」という質問が出た。これに対して、明快な答えがなかったことには、納得がいかなかった。私ですらいくつかすぐに具体案を出せる。私は、少なくとも1割の経費節約は可能だと考えている。研究院長をつとめられているのだから、この質問には明快に答えていただきたかった。
現執行部から立候補された有川・柴田両候補に対しては、前回の総長選挙に立候補されたO先生から、「お二人の公約は、前回の私の公約に似ている。私が研究院長当時、どうして私の考えを支持されなかったのか」という質問があった。回答はやや歯切れが悪かったものの、現総長とは違って部局長や構成員の意見をよく聞いて運営に当たりたい、というものだった。
今回、赤嶺候補に対して、部局長・評議員経験者を多く含む100名あまりの推薦があった。この数字は、現執行部のやり方への不満が学内でいかに大きいかを物語っている。実は私も、ある方のお勧めで、赤嶺候補の推薦人に名を連ねた。
赤嶺候補の推薦人リストは、現執行部に対する不信任表明といって良い。このリストを見て、有川・柴田両候補ともに、部局長や構成員の意見をよく聞いて運営にあたることの重要性をあらためて認識されたのだと思う。3候補のどなたが総長に当選されても、執行部と部局の風通しは、現在よりずっと良くなるだろう。これは、赤嶺さんが100名以上の推薦を受けて立候補されたことの効果だと思う。
私は有川・柴田両候補に対し、以下のような意見を述べ、質問をした。

私が赤嶺さんの推薦人に名を連ねたのは、これだけは変えて欲しいという点があったからだ。それは、厳しい人事凍結だ。生物科学部門では、2年前に准教授が栄転されたあと、補充できていない。さらに、この3月に教授が2名やめたが、そのあとも補充できていない。生物科学部門はCOEにも採択された日本を代表する研究拠点であり、人事を行えば日本を代表する研究者を採用できる。しかしそれができないでいる。アクティビティが高い部門ほど、人は動く。現在の人事凍結は、アクティブなところほど人が補充できないという最悪の制度だ。このような人事凍結をしておいて、九大を強くすると言われても、説得力がない。有川候補からはポイント制だけにするという提案があったが、もうすこし具体的に解決策を伺いたい。柴田候補からは九大基金を設けるという提案があったが、それには時間がかかる。GCOEの申請もこれから続く。事態は急を要する。運営交付金の運用で解決すべきではないか。

この質問に対し、柴田候補からは、「重要なポイントであり、問題意識は矢原先生とまったく共有している」というコメントに加えて、予算がいかに足りないかについての補足説明があったが、旧7帝大の中で九大だけなぜこれほど厳しい予算不足になるかについての明快な説明はなかった。演説会が終わってから、ご本人に個人的に伺ったところ、一枚の資料を示された。その資料には以下のように書かれていた。

全学管理人員の推移
平成16年度62名→平成20年度98名
(減)
埋蔵文化財調査室 助手△1
国際交流推進室  助手△1
産学連携センター 助教授△1
(増)
大学文書館 教授1
新キャンパス計画推進室 教授1
附属図書館 助教
安全衛生推進室 教授1

  • 総長裁量ポスト 7増
  • 総長提案 5センター 28増

なんと、全学管理定員が36名も増えているのだ。柴田候補は、九大が厳しい大きな理由はこの点にあると個人的にコメントされた。
有川候補は、人事管理に予算管理をからめてしまったために身動きがとれなくなったのであり、ポイント制だけにすれば問題は解決できるという説明を繰り返された。予算の裏づけをどうするかの説明はなかったが、ポイントがあれば人事ができるようにするという結論を先に出して、それを実現するにはどうするかというように考えれば良い、という意見であった。
両候補とも、九大を強くするうえで、現在の人事凍結が大きな問題であるという認識はされている。お二人のどちらかが総長になられた場合、ぜひこの問題の解決に最優先で取り組んでいただきたい。
赤嶺候補には僭越ながら、私ならこうする、という意見を演説会後にもうしあげた。赤嶺さんを推薦された100名以上の方々は、九大を良くするためのアイデアをいろいろお持ちのはずだ。私にもいくつものアイデアがある。「現場重視」を主張されるなら、推薦人の方々に九大を良くするためのアイデアを書いていただいて、それをウェブサイトに掲載し、それをもとにした追加公約を出されてはどうか。
投票日(27日)までまだ9日ある。やる気になれば、今からでもできることである。さて、やっていただけるだろうか。
赤嶺さんが立候補されたことで、大学全体で演説会が開かれ、大学運営のあり方について開かれた議論が展開されていることは、とても良いと思う。意向投票で誰を選ぶかについての判断材料は、前回までの総長選挙に比べ格段に豊富になった。
誰を選ぶかは、構成員ひとりひとりの責任で決めるべきことである。私の報告が、その判断の一助となれば幸いである。

※有川先生から以下の連絡を受けたので、転載する。

(減)には、
新キャンパス計画推進室 助教授△2、助手△1
大学文書館(大学史料室) 助教授△1
をつけるべきだと思います。
少なくとも、この双方に、教授1を(増)の方に書くのであれば、その人たちが占めていた助教授1を(減)の方にも書いておくのがフェアかと思います。新キャンパス計画推進室に関しては、A助教授、B助教授、C助手のポストを返還して、教授のポストを作ってもらい、また、大学文書館は、大学史料室のD助教授が大学文書館設置にともなって昇進したといういきさつがあります。なお、図書館の助教は付設記録資料館の助教です。