朝に開花するエゾキスゲ

yahara2008-06-23

木曜日の学振POの会議後に北海道に飛び、小清水原生花園でエゾキスゲの開花習性について観察をしてきた。私は昨夜ひとまず戻ったが、卒業研究生のMさんは、いまも現地で観察を続けている。7月20日まで観察を続ける予定である。私も水曜日には再び北海道に飛び、週末までMさんを現地で指導する。
エゾキスゲは、夜昼咲きという性質を持つと記述されてきた。ヘメロカリスの中で、ハマカンゾウノカンゾウなどの昼咲き種は朝に開花し、夕方に花を閉じる。一方、夜咲き種であるユウスゲキスゲ)は、夕方に開花し、翌朝には花を閉じる。いずれも花の寿命は半日である。しかし、エゾキスゲは夕方に開花したあと、翌日の夕方まで咲き続ける、と記載されてきた。
ハマカンゾウユウスゲを交配して作成したF2雑種では、このような夜昼咲きの個体があらわれる。詳しくは省略するが、F2雑種の開花習性から判断して、昼咲きから夜咲きへの進化は、夜昼咲きという状態を経て起きたと考えられる。したがって、エゾキスゲは開花習性の点では、このような進化の中間段階を留めている可能性があるのだ。
そこでエゾキスゲの開花習性が送粉昆虫にどのように適応しているかを調べようと考えた。
ところが、現地で観察してみると、エゾキスゲの花の中には朝開花を始めているものがかなりある。写真はその一例である。朝10時過ぎに撮影したものだが、ようやく花被片が半開きとなり、おしべが見え始めている。このような花のほかに、夕方に開花を始める花も少なくない。どうやら、「夜昼咲き」という記述で簡単に片付けられるものではなさそうだ。

今日は夕方、総長候補の演説会に出たが、その報告はまた後ほど。人間の世界よりも、やはり植物の世界を見ているほうが楽しい。