岩槻さんの文化功労者顕彰祝賀会

朝9時25分の便で上京し、帝国ホテル東京で開催された恩師(岩槻邦男さん)の文化功労者顕彰祝賀会に出席した。とても懐かしい多くの方々に再開し、楽しいひとときを過ごすことができた。インドネシアからはDさん、韓国からはIさんが出席されていて、旧交を暖めた。小石川植物園や日光植物園に在職中にお世話になった方々にも再会できた。おそらく岩槻さんも、ご自分が受賞されたこと自体よりも、それがきっかけとなって、多くの関係者が集まる場ができたことを喜んでいらっしゃることだろう。また、兵庫県人と自然の博物館館長として、博物館の発展に努力されている立場にあるので、この顕彰が、我が国における博物館の地位向上・条件整備に役立つことを願っていらっしゃることだろう。
弟子としては、顕彰を受けられたこと自体もさることながら、まだ現役として活躍を続けられていることが嬉しくもあり、励みにもなる。
約200人の参加者が次々に挨拶されたので、会場での挨拶は短く済ませたが、閉会後にややゆっくりと話す時間を持つことができた。昨年はじめて中国に出かけたことや、ケープタウンテーブルマウンテンに登り、ついに5大陸に足跡を残すことができたことをご報告した。岩槻さんは、昨年はフィリピン、ボルネオ、中国などに出かけられたそうだ。私も定年まであと11年ほどになったので、残る在職期間中は、世界のフィールドをできるだけたくさんまわりたいという趣旨のことを申し上げた。「定年まであと11年」と言ったところで、「まだまだ先は長いよ」とあっさり返された。「そうかぁ、もうそんな年か」と言われなかったのは、ご自分の(=岩槻さんの)フィールド人生もまだまだ先があると思っていらっしゃるからだろう。岩槻さんの年まで元気でいて、世界中のフィールドを旅したいものである。
私が東大の助手のころに、植物レッドデータブック編集の仕事にかなりの時間を割いているのを評して、「競争の激しいこの時代に業績にならない仕事に時間を割くのは、自分の能力によほど自信があるか、よほど無頓着か、どちらかだろう」というような「嫌味」を、UP(東大出版会の宣伝誌)に書かれたことがあった。そう言いながら、結局ご自分も、生物多様性保全に関わる仕事に相当な時間を割き、多大な努力を払われてきた。今回の祝賀会に、堂本千葉県知事が出席されていたのも、環境省審議官が出席されていたのも、その努力のかいあってのことである。
岩槻さんの「嫌味」は、結局は私にとっての激励でもあって、そういうお付き合いを今日まで続けさせていただいたのはありがたいことである。
これからもお元気で、弟子に「嫌味」を言う恩師を続けていただけることを、心から祈念したい。
※祝賀会が午後6時開宴なのに、朝9時25分の便に搭乗した理由は、次の機会に書くことにしよう。