プヤ・ライモンディの不思議

定食屋で夕食をとりながら、NHKの自然番組「ダーウィンが来た」第39回 「巨大高山植物 百年目の開花!」を見てきた。知人のMさんとKさんが出演されるとあっては、見逃すわけにはいかない。いつもは6時に夕食をとるのだが、放映時間にあわせて夕食をとった。
なるほど、でかい。10mを超える花序は、巨大な柱である。インディオの人たちが、輪切りにして椅子に使っているのが、興味深かった。葉は屋根を葺くのに使われている。伝統的な社会の中では、多様な生物は資源そのものなのだ。
特別許可を得て切り倒した花序をノコで縦断し、断面をなめるシーンで、Kさんがひとことつぶやいた。
「Mさん・・・これ甘いよ」
この撮影シーンを想像してみた。

まず、Kさんが歓声をあげる。
「ウォー、甘い、甘い、Mさん、これ、すんごく甘いよ」
それを聞きつけたディレクターが、カメラマンを呼んで、
「今の、いいですね、もういちど言ってください」
そこで、Kさんが、恥ずかしそうに再演する。
「Mさん・・・これ甘いよ」

撮影シーンというのは、まぁ、こんなもんだ。
それにしても、Kさん、絵になりますねぇ。定食屋のおばさんが、つぶやいていましたよ。
「この人、外国の人?」
いかにも、長年プヤを調査している、現地の大学の先生という感じでした。
カメラを向けられていないときは、酸素マスクをして、砂の惑星のエイリアンのような格好をしていたとは、誰も想像しないでしょう。
番組を見て、不思議に思ったことがいくつもある。
100年に一度巨大な花序をあげるのは、遠くからハチドリを呼ぶためだ。アンデスの高山には、ハナバチはほとんどいないので、ハチドリを呼び寄せて花粉をはこばせているのだ、ということだが、じゃぁ、プヤが咲かないとき、ハチドリはいったいどうしているのだろう。
春に雨が多いと、花序がたくさんあがるということだが、グラフで示された結果によれば、春に雨が多かった4年のうち、花序がたくさんあがったのは3年で、あとの1年はハズレだった。これじゃぁ、統計的には有意ではない。たぶん、春の雨のほかに、少なくとももうひとつ、重要な引き金があるのだろう。
もっとも、グラフをきちんと見せてくれれば、このように客観的評価ができる。グラフも見せず、寝てもいないマウスを「寝てしまった」と放映した某テレビ局とは大違いだ。
NHKは何かと最近評判が悪いが、「ダーウィンが来た」のような良質の自然番組を放映してくれるので、私はNHKに受信料を払うことに不満はない。
ところで、ネコ好きの方は見逃さなかったと思うが、プヤの葉で葺いた小屋の入り口に、ネコがいた。しかも2匹。ブチとチャトラだった。
4000mの高山にもネコが暮らしているんだ。きっと高山適応をしているのだろう。毛色はきっと、人間の好みによる多様化選択で維持されているんだろうな。
さて、明日がしめきりの審査を何としても終わらせねば・・・。