初夏の新キャンパス

今日は、ひさしぶりに伊都キャンパス(九大新キャンパス)生物多様性保全ゾーンに出かけた。昨日の午後にわたしの講義を聞いた、第3回福岡グリーンヘルパー養成講座受講生の方々が、生物多様性保全ゾーンを見学されたあと、福岡グリーンヘルパーの会のメンバーの指導を受けながら、植樹や竹切りを体験された。何事も体験が重要である。講義を聴いただけでは、知識がほんとうには身につかない。
生物多様性保全ゾーン」と名づけられた谷は、生き物が豊かで、自然観察にはもってこいの場所である。今日はちょうど、ネズミモチの花が最盛期を迎えていた。ハゼノキも花盛りだったが、こちらはあまり人目をひかない。若い花序をあげたノグルミのほうに注目が集まっていた。また、林縁には、ニワトコの赤い実が、よく目立っていた。そのニワトコの木の下方に、ソクシンランが白い花穂をあげていたが、これに気づいて尋ねる人はいなかった。昨年までに確認していた株以外に、数株が新たに花穂をあげていた。ソクシンランは増えているようだ。
メダカ池のほとりには、ミソハギの群落があるが、ノイバラが茂ってきたために、年々群落の面積が縮小し、今年はかなり痩せ細った茎しか出ていない。このままでは、ノイバラに負けてしまいそうなので、福岡グリーンヘルパーの会から鎌を借りて、ノイバラ退治をした。ノイバラにはもうしわけないが、池のそばは、湿地の状態を維持したい。低木林に遷移してもらっては困るのだ。
上流の棚田予定地には、コウキヤガラがたくさん発生していた。造成前の調査では、まったく発見できなかった植物だが、新キャンパス周辺の水田土壌中には、かなり多量に種子が眠っているようだ。保全ゾーンでは、いまや珍しくない植物になった。鮮緑色の葉が風にゆれる様子は気持ちが良いし、白い柱頭が毛のように見える小穂も、比較的大型で、見ごたえがある。しかし、それと気づいている人はほとんどいないだろう。
私は、ほとんどの植物の名前がわかる。この知識は、私の人生をとても楽しくしてくれている。植物の名前を知らない人とは、世界がまったく違って見えていると思う。名前を知れば、愛着が生まれる。道を歩いていても、楽しい。
棚田をすぎて、上の湿地帯に行くと、昨年の大旱魃を生き抜いたヒメハリイが元気に穂をあげていた。この春に新しく作った池には、多数のシャジクモが発生していた。また、最近ではすっかり見かけなくなっていたヒメコウガイゼキショウが、池のほとりに多数出現していた。すっかり衰退してしまったナンゴクデンジソウも、この池の造成をきっかけに再発生してくれることを、期待している。シャジクモやナンゴクデンジソウを存続させるには、水田耕作を続ける以外ないようだ。おそらく1000年以上にわたり、水田耕作に適応してきた植物なのだろう。
福岡グリーンヘルパーの会のHさんから今年の活動予定表をいただいたので、私のウェブサイトの日程表を更新した。カメ調査と環境創造舎の活動予定も書き込みたいので、Kさん、S舎長、日程をご連絡ください。
伊都キャンパスで活動している3つのボランティアチームの取り組みは、どれもすばらしい。サイエンスの記事を書いてくれた記者も、市民・学生の取り組みを高く評価してくれた。記事の中でもある程度紹介されている。それは、世界に誇れる活動なのである。
しかし、3者の連絡・連携は必ずしもうまくできていない。先日、この3者で、今後の連絡・連携を進めるために、打ち合わせがもたれたそうだ。3者の協力関係が発展するよう、心から願っている。3者をつなぐことに、私がもっと時間を割けると良いのだが、サバティカルをとっても十二分に忙しくて、なかなか思うようにならない。
今週は、水曜日の「環境科学概論」(今年唯一の授業)のあとで上京し、木曜日は日本学術振興会の会議。