テーブルマウンテン登頂

yahara2007-04-03

昨日は、Kirstenbosch Botanical Gardenから、Nursery Ravineのルートをたどり、テーブルマウンテンのピークに登頂。帰路は、Skelton Gorgeを下った。花の少ない時期だというが、King Proteaの花(写真)も見れたし、赤い花のDisa(ランの一種)も見れた。
テーブルマウンテンの台地上の植物は、面白すぎる。エリカ属だけとりあげても、米粒大の小型の花から、赤くて長い花筒をもついかにも鳥媒花の種まで、著しい多様性が見られる。しかし、ケープのフロラを代表するこのエリカ属についてすら、本格的な研究はまだ行われていない。
イネ科・カヤツリグサ科の近縁群である、レスチオ科の多様性もすごい。北半球の温帯でイネ科・カヤツリグサ科・イグサ科などが占めている生態的地位を、レスチオ科のさまざまな種がしめている。それは一種のパラレルワールドだ。
今日は、テーブルマウンテンの岩壁の下の小道を通って、ホテルからKirstenbosch Botanical Gardenまで、2時間かけて歩いた。沢筋などの湿った場所には、立派な常緑広葉樹林が見られる。ブナ科・ツバキ科・クスノキ科が見られないので、組成は違うのだが、林相は照葉樹林にそっくりである。
見慣れたグループとしては、ヤブコウジ科が目立った(ただし、結構な高木になっている)。見慣れないグループとしては、クノニア科のCunonia capensisが随所で花をつけていた。
そのほか、モチノキ科・クロウメモドキ科・ウルシ科など、科のレベルではわかるものが少なくない。地球は一続きなのだと実感した。
5時に、Kirstenbosch Botanical Gardenのカフェで旧知のWilliam Bondさんと待ち合わせをして、ライオンズ・ヘッド(テーブルマウンテンの北側にある山)までドライブし、山火事後の植生を案内してもらった。多くの種は、温度や光ではなく、煙で種子発芽が誘導されるそうだ。煙発芽種子という現象を始めて知った。
何十年に一回の大規模な山火事のあとで、さまざまな植物が一斉に発芽し、お花畑を作るそうだ。春(8-9月)には、色とりどりの花でおおわれるという場所を案内してもらったが、いまは枯れた植物が多くて、残念だった。「春」に再訪したいものだ。
William Bondさんとは、まだ駒場にいたころに、レッドリストカテゴリーの会議で何回か同席した。そのとき、何となく雰囲気が気に入っていたので、今回コンタクトしたのだが、やはり生粋のナチュラリストだった。この種はenatiostylyだ、おおそれは面白い、というような会話をしながら、ライオンズ・ヘッドの山火事跡地を歩いた。とっても楽しかった。
ライオンズ・ヘッドからケープ大学に戻り、ファカルティ・クラブでギネスビールを飲みながら、植物学のチャットを楽しんだ。つい、I will come back to study Cape plantsなどと口走り、研究計画のアイデアまで熱弁をふるってしまった。
ケープとの時差は7時間で、ケープは実は日本から結構近い。少なくともサンパウロ(時差12時間)よりは、ずっと近い。
世界には、面白い場所がありすぎて、困る。