岡崎生物学コンファレンス「絶滅の生物学」2日目

午前中のセッションのテーマは、Population perspectives for extinction。
一人目は、Barry Brook。「絶滅の生物学の原理を定量化する:イノベーションへの土台」という意欲的なタイトルで話したが、タイトルにふさわしい、充実した内容だった。
講演の内容は、「過去・現在・未来」の3部構成。
まず「過去」についての話。オーストラリア大陸で、第四紀に絶滅したメガフォーナ(大型哺乳類)を題材に、体のサイズが大きいほど絶滅しやすいことを立証。化石哺乳類と現存の哺乳類を体サイズクラスに分けると、大きな体サイズクラスで、絶滅哺乳類の比率が高い。この差は、カイ二乗検定で有意。現存の哺乳類の個体群データから、減少したときの最大回復速度と、世代時間が、ともに体サイズとアロメトリーの関係にあることを示し、大型ほど絶滅しやすい理由を説明した。
次に「現在」の話。多くの個体群存続可能性分析(PVA)は、密度依存性(個体数が減ると密度効果が弱まって回復する)を無視していると指摘。横軸に個体群センサスの期間をとり、縦軸に個体群の成長率をとって、これまでの研究データをプロットすると、センサス期間が短いデータでは、個体群の成長率が大きくばらつき、大きく減少しているというデータもあるが、センサス期間が長くなるとともにこのばらつきは減少し、0に収束する。つまり、長くセンサスした研究では、平均的には減りも増えもしていない、という結果が得られている。したがって、密度依存性を正確に評価することが重要で、そのためにはAICによるモデル選択や、ベイズ的アプローチが有効だと主張。
最後に「未来」と題して、北オーストラリアの熱帯雨林について、航空写真から過去のハビタットロスを追跡し、GISを使って将来のリスクを評価した結果を紹介。このアプローチは、私も個体群センサスにもとづくリスク評価より信頼がおけると考えて、日本の植物の絶滅リスク評価に採用しようと計画しているもの。
個々の問題の細部に拘泥せずに、問題群の関係を俯瞰的に把握して、体系的に取り組んでいることがよくわかる講演だった。
2人目のIllka Hanskiは、前回に続いて、チョウのデータを使ったメタ個体群の解析結果を紹介。空間的な相関を評価するために、Ne=N/((N-1)p+1)という形で、相関の強さをあらわすパラメータpを導入したやり方は、なるほどと思わされた。ただし、いわゆる「島モデル」であり、「飛び石モデル」や「格子モデル」で扱うような空間的な自己相関の評価をしているわけではない。
3人目のFranck Courchampの話は、Allee効果についての非常に明快なレビューと、人為的なAllee効果についてのとても面白い研究。新鮮だった。続きはまた、あとで。