絶滅の生物学:揺籃期から成長期へ

岡崎生物学コンファレンス「絶滅の生物学」を昨日終えて、沖縄に向かう機内にいる。
「絶滅の生物学」の準備には、オルガナイザーとして相当な時間をとられたが、全力で目標を達成した満足感が得られた。5日間という長丁場のプログラムだったが、最後まで高い水準の講演が続いたので、緩んだ時間はなかった。プログラム全体の構成も、自己採点で90点の出来だった。3人の講演者が病気やけがなどで、直前に参加をキャンセルしたのはとても残念であり、この3人がいれば100点に近い評価が得られただろう。参加者の討論も活発で、とても刺激的なコンファレンスだった。
「指導的な研究者の国際的なネットワークを作ることで、新分野を育てる」というのが岡崎生物学コンファレンスの狙いである。今回は「絶滅の生物学」というテーマで行う2回目のコンファレンスなので、2年前の参加者の中から、「絶滅の生物学」という新分野を開拓するうえでは欠かせない人物をもういちど招待した。一方で、「絶滅の生物学」について討論をするには、この人は欠かせないという人物を、新たに何人か招待した。そして、「絶滅の生物学」というタイトルで教科書を書くとすれば、どういう構成にするかを念頭に置いて、プログラムを編成した。さらに、陸上・陸水・海洋生態系のバランスをとり、哺乳類・鳥類・両生は虫類・魚類・昆虫・植物をカバーするように配慮した。もちろん、理論と実証のバランスも考えた。
最終日の最後の枠では、15分ほどの時間を使って、Concluding remarksを述べ、絶滅の生物学の位置づけと今後の課題について問題提起をした。そのあと30分あまりの討論を行い、5時半に閉会した。Concluding remarks用のパワーポイントスライドは、最終日前夜、コンファレンスデイナーのあとに2時間くらいで準備をした。講演原稿を書いている余裕がなかったので、英語の表現を考えながら、とつとつとした話しかできなかったが、提起した問題に活発な意見が出たので、コンファレンスの終わり方としては、満足のいく出来だったと思う。Concluding remarks用のパワーポイントスライドは、後日、ウェブサイトで公表して、記録にとどめようと思う。
2年を置いて行われた2回のコンファレンスで、「Extinction Biology」という新分野の形が、かなり定まってきたとおもう。「Extinction Biology」はこれから、揺籃期をすぎて、成長期へと向かうだろう。今回のコンファレンスの参加者は、この流れの中心にいる。その臨場感を共有できたことが、このコンファレンスの最大の成果だったと思う。今回の参加者には、何人かの非常に若い、アクティブな研究者がいた。彼ら、彼女らが、2年後にはこの分野のリーダーに育っていることだろう。楽しみである。
もちろん、私自身も、この分野で成果をあげることに関して、かなりモチベーションが高まっている。