心はどのように遺伝するか

「生態学I」の授業が終わったところ。授業のあとは、1週間でもっともハッピーな気持ちになれる。それほど私にとって、授業はプレッシャーになっている。嫌いではないが、ちゃんと用意しないと気がすまない。しかし、時間は限られている。ちゃんと用意しても、寝てる学生は必ずいる。
今日は、量的遺伝学に関する内容(教科書"Evolutionary Analysis"の第8章)の2回目。双生児研究によって人間の形質の遺伝率をどう推定するかという話から。
安藤寿康さんの『心はどのように遺伝するか』を紹介し、分散・共分散・相関・遺伝率について復習したあと、創発的遺伝についても説明。創発的遺伝とは、2卵性双生児ではほとんど相関のない形質が、1卵性双生児ではきわめて高い相関を示すような場合である。量的形質に対して超優性の効果があらわれていると考えられる場合であり、親子の相関関係では、「鳶が鷹を産む」ような効果があらわれる。形質が遺伝的であることと、親が子に似ることとは同じではないということを説明したが、どこまでわかってくれたかな。
そのあと、対立遺伝子の単独効果・優性の効果・育種値について説明。この部分は、学生に受けるとは思えない内容だが、授業である以上、しっかりやっておきたい。式の導出に関する説明は省略し、ホームページをスクリーンに映写して、ここにファイルを置いているから参照するようにと指示をした。
授業の準備のために、久しぶりに、安藤寿康さんの『心はどのように遺伝するか』を取り出してみたが、あらためて良く書かれた本だと感心した。
生態や遺伝に関わる研究している人なら、一度は読んでおくべき本だと思う。
たとえば、英語を教える場合に、会話中心に教えるほうが効果があるか、文法中心に教えるほうが効果があるかという問題について、双子を使って調べた研究が紹介されている。この内容も非常に示唆に富んでいる。今日の授業では、この研究例の紹介にかなりの時間を割いた。遺伝と環境の相互作用を教える教材としては、とてもよいと思う。
上記の問題に関する答えは明快だ。会話中心に教えれば会話の得点があがり、文法中心に教えれば文法の得点があがる。それ以外の得点にはとくに差が生じない。
双子研究には、非常に大きな可能性があると思う。