カブトガニとゲンジボタル

yahara2005-06-07

今日は、今津干潟の調査に出かけた。理学研究院天草臨海実験所、私が所属している生態科学研究室、工学研究院の河川工学関連の2つの研究室、比較社会文化研究院の保全遺伝学研究室、農学研究院水産実験所のスタッフ・学生が参加する合同調査である。2回目の今年は、参加者が50名をこえた。
今年は、コードラート法による底生生物の定量採集チームと、採集生物種を増やすための網羅的採集チームに分かれた。私は、網羅的採集チームをもっとも良く干潟環境が残された場所に送り届け、作業が順調にスタートするまで見届けたあと、定量採集チームに加わるはずだったが、カニ類など干潟生物の採集につい時間を忘れ、結局、網羅的採集チームに最後までつきあった。
そのおかげで、カブトガニを見ることができた。甲羅の長さが5cm程度の子供だった。手のひらに乗るサイズである。手のひらのうえで、仰向けにすると、体を直角に折り曲げる習性がある(写真参照:撮影してくれたF君に感謝)。おそらく、ひっくりかえって、下向きに戻るための行動なのだろう。体を直角に折り曲げたときの、頭部の様子は、ダースベーダーそっくりである。何とも奇妙な動物だ。
小学校時代には、身の丈ほどのカブトガニを見たことがある。今ではそれほど大型の個体にはなかなかお目にかかれない。小型の個体でさえ、見ることができれば幸運である。今津干潟のカブトガニも、他の例にもれず、減少傾向にある。この傾向を食い止め、カブトガニの存続を可能にする道を探りたい。
干潮の時間に調査を行ったので、調査開始は2時すぎ、終了は7時近くになった。後片付けが終わったのは、8時すぎである。この時間になれば、新キャンパスの小川では、ゲンジボタルが飛び始める。天草臨海実験所チームが、新キャンパス工事事務所の前で、調査の最後の片付けをしている間に、生物多様性保全ゾーン入り口の小川まで歩いて、ゲンジボタルを見てきた。約40個体が、小川にそってゆったりと飛びながら、光の軌跡を描いていた。
小川の反対側の斜面の上には、工学研究院教育研究棟となる高層ビルがそびえる。まだ誰も使っていないが、階段には照明がともっていた。10月からは、夜遅くまで、あちこちの部屋から明かりが漏れるだろう。明るいキャンパスは、夜の動物たちにどのような影響を与えるだろうか。
少なくとも、影響の有無を判断するための調査は、必要である。課題はつきない。