Collapse

今日は終日、年度末に堆積した書類・郵便物を片付けた。自然再生事業指針ファイナルバージョンのチェックなど、急ぎの仕事のためにも、資料が必要なのだが、7つの山に堆積した「書類・郵便物」が地すべりを起こし、不整合だらけで、必要なものがなかなか見つからない。意を決して、「土砂」に埋もれた「地表面」の発掘作業をした。ようやく、「地表面」が見えたが、生態学会大阪大会の資料がまだ発掘されない。あと二山だ。
息抜きに、M中さんの「leeswijzer」を見ると、「Collapse」が紹介されているではないか。「dagboek」には、表紙の写真までアップされている。
世界的なミリオンセラーとなった「銃・病原体・鉄」の著者、Jared Diamond が、文明の崩壊をとりあげて書いた最新作だ。私の手元には、まだ届かない。ちと、くやしい。
この本で展開されている Diamond の主張は、彼のプリンストン大学での講演記録に要約されている。
「銃・病原体・鉄」同様に、彼の問いは、明快である。なぜある文明は滅び、他の文明は滅ばなかったのか? 
ダイヤモンドは、まずは比較的良く知られた結論から、説明を始める。最近の考古学的研究によれば、イースター島の巨石文明や、アナサジの摩天楼文明の、ロマンチックでミステリアスな「collapse」は、環境破壊を続けたための「生態学的自殺」(ecological suicides)である。
しかし、イースター島やアナサジと同様に、環境破壊を続け、社会が衰退したにもかかわらず、「collapse」に至ってない例もある。
その例として、モンタナ州がとりあげられる。このあたりから、ダイヤモンドの語りが冴える。モンタナ州は、銅鉱山でにぎわい、森林と農地に恵まれ、かつては合衆国でもっとも豊かな州だった。しかし、森林は切り尽くされ、今や山火事が絶えない。農地は塩分集積によって荒廃した。鉱業が衰退したあとに残されたのは、栄養失調の子供と、人口減に悩む社会である。
しかし、イースター島やアナサジと違って、モンタナ州の社会は、滅亡してはいない。なぜかといえば、他の州からの友好的な支援があるからだ。
このように、文明が崩壊するかどうかは、環境破壊・気候変動という要因と、友好的な支援があるか、それとも敵対国の脅威があるかという「周辺事情」の相互作用の結果である場合が多い。これに加えて、伝統的な文化の役割もときに重要であり、これら5つが、文明崩壊の主要因であると、ダイヤモンドは主張する。
このように一般論を展開したうえで、過去に崩壊した文明を次々にとりあげて、説明を加えていく。イースター島の文明は、他の文明から孤立していたために、環境破壊という単独要因だけで滅んだ、もっとも単純なケースである。一方、バイキングの北方文明の崩壊には、5つの要因がすべて絡んだ。森林伐採に加えて、気候の寒冷化がバイキング文明をおそった。気候の寒冷化は、友好国との海上交易を困難にした。さらに、イヌイットの攻撃にさらされた。イヌイットから、鯨を食べることを学べばよかったのに、伝統的な肉食文化に固執した。その結果、バイキングは、1400年代に滅亡した。
最後に、われわれの文明の行く末が論じられる。今や、世界はグローバル化した。グローバル化し、一続きになった世界は、イースター島に似ている。もはや誰も助けてくれない。運命は、私たち自身の選択にかかっている。
イースター島で、最後の木を切り倒した人物が、何と言ったかを想像してみたくなる、とダイヤモンドは言う。そのあとの一言には、苦笑させられる。「だいじょうぶ、そのうちテクノロジーが問題を解決してくれるさ」(Don’t worry, technology will solve all our problems.)。
主張の要点はわかったが、本はやはり待ち遠しい。
さて、あと二山。
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