最近のNature記事

久々に睡眠不足を解消したけど、体の節々が痛い。花粉症だと思っていたが、風邪も引いていたのかもしれない。幸い、週末だ。今日・明日は、のんびりしよう。
Natureの最新号に、「性の進化」に関する論文が出ていた。

Sex increases the efficacy of natural selection in experimental yeast populations
MATTHEW R. GODDARD*, H. CHARLES J. GODFRAY & AUSTIN BURT
Nature 434, 636 - 640 (31 March 2005)

有性生殖は適応進化の速度を速めるという理論を、酵母を使って実証した研究。同様な研究成果は、Graham Bellらによってすでに発表されているが、酵母の遺伝子操作の技術水準が高まり、より決定的な証拠が出たということだろう(詳しくはこれから読みます)。
Charles Godfrayは、寄生蜂の研究で有名。九大にも来てくれたことがある。生態学会大阪大会に招待されて来日していたが、私は別会場にいて、会えなかった。
Austin Burtは、sex allocationのモデリングをしていた大学院生時代から、有望新人として注目されていた。ハワイの学会で私の発表にコメントしてくれたことがある。穏やかで、偉ぶらない人だった。あれから10年あまり。すっかり偉くなっちゃったなぁ。
上記の論文については、Rolf HoekstraによるコメントがNature434, 571 - 573に掲載されている。

Is it because sex has brought together different beneficial mutations that have arisen in separate lineages, or because sex has liberated beneficial mutations from unfavourable genetic interactions with other genes? Further genetic characterization of the mutations responsible for the adaptation to the harsh environment would be a first step to distinguishing between these possibilities.

というコメントは、的確にポイントをついている。
次は、3月30日に公表された国連の生態系ミレニアムアセスメントに関するコメント。

Confronting the human dilemma
HAROLD MOONEY, ANGELA CROPPER & WALTER REID
Nature 434, 561 - 562 (31 March 2005)

この報告書は、一読しておかねばなるまい。
3月24日号のNatureには、ゲノム外の鋳型を使って「先祖帰り」が起きるという論文が出ている。

Genome-wide non-mendelian inheritance of extra-genomic information in Arabidopsis
SUSAN J. LOLLE, JENNIFER L. VICTOR, JESSICA M. YOUNG & ROBERT E. PRUITT
Nature 434, 505 - 509 (24 March 2005)

シロイヌナズナHTHという遺伝子に関する劣性ホモ個体(hth/hth)では、4−8%という高頻度で、hth/HTHへの「先祖帰り」が起きるという。コンタミや外交配によるアーティファクトという可能性は、慎重に排除されており、何らかの未知のメカニズムで、「先祖帰り」が起きたと考えざるを得ない。
ひえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。ほんまかいな。
著者らは、安定な二本鎖RNAが、複数世代にわたって伝達される機構を提唱している。そして、そのような機構の機能は、近交弱勢を避けるためではないかと推論している。
とんでもない大発見か、ただの例外か、その評価は数年のうちに決まるだろう。今後の展開に目が離せないことだけは、確かだ。
ヒトをはじめとするいくつかの生物の全ゲノムが決定されて以来、多種多様な「RNA」が生命を支えていることがわかってきた。「安定な二本鎖RNAが、複数世代にわたって伝達される」というアイデアは、今や、突飛なものではない。今回の発見は、「ただの例外」で片付くものではなさそうな予感がする。