温暖化をめぐる冷静な議論

地球の温暖化に関しては、中西準子さんが3月1日の雑感294で「頭を冷やそう!温暖化問題−不確実性の大きな事象にどう対処するか?−」と題して、冷静な議論を展開されている。
まず冒頭で、温暖化や生態系への影響の予測に不確実性があるから温暖化ガス排出抑制は意味が無いという考えと、不確実だからとことん減らすべきだ、という二つの両極端の考えになりやすいが、このような両極の考えからの脱却が必要だという意見を書かれている。もっともだ。二項対立はいけない。最適解は通常、両極ではなく、中間にある。
「私は、異分野の研究者と会い、議論する機会が多いが、その中で温暖化影響を確定的なこととして話し、大変だ大変だと言うのは、温暖化メカニズムの研究者でも生態学者でもなく、代替技術の研究者である。そこでは、環境影響は温暖化しかない。他の環境問題には全く関心がない。温暖化で地球は今やつぶれそうになっているかの如き議論が展開されている。そうでなければ、代替技術は使えないから。ダイオキシン問題での焼却炉企業関係者を思い出してもらえばいい。」という批判的コメントにも、同感である。
単一問題のみについての議論ではなく、複数の問題を考え、総合的なバランスを評価して対策を選択すべきだという中西さんの主張に、全面的に賛成だ。二酸化炭素を出さないから、原発がクリーンエネルギーだとは言えない。風力発電だって、鳥には脅威である。どんな対策にも環境負荷はある。一つの対策ですべてが解決するかのような議論は、あぶない。
「では、どうするのか?」と問うところが、中西さんらしい。つねに具体的な解を求める姿勢が、大切だ。中西さんの「解」は、以下のとおり。
「予測の確かさとは別に一定の推定値を仮決めし、それに基づく政策を提示し、その見直しをするという循環しかないということである。この仮決めは、代替技術導入の是非を判断するためにも、どうしても必要である。」
なるほど、と思う。「自然再生事業指針案」の「19 将来成否が評価できる具体的な目標を定める」に通じる指摘である。さらに具体的な提案が続く。
「4℃を2100年度での推定値として、一応fixする。10年毎に、この推計値が正しいかどうかはcheckする。・・・この場合の生態リスクを推定する。これにも幅はあるが、多くの科学者の推定値を参考に大凡の値を決める。この値が10単位となったとする。この場合は、測定のための指標が必要である。どういう指標をもってその影響を測るか、例えば代表的な100種の生物の生存状況等を決めておき、節目で状況観測を行い、環境影響予測が正しいかとうかのcheckをする。」
この提案は、生態学者としては、耳が痛い。中西さんに指摘されるまでもなく、地球温暖化の環境影響は、生物による評価が必要である。しかし、地球温暖化対策事業の中で、生物多様性への影響評価は、ほとんど進んでいない。政府の政策が地球環境シミュレーションに偏っているという面もあるが、生態学者の努力不足も否めない。
生態学者は、地球温暖化の影響を評価するための「代表的な100種の生物」と、その観測点を提案すべきではないか。中西さんに、大きな宿題をもらってしまった。

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