{映画]おおかみこどもの雨と雪

人間ドックのため9時以降は食事がとれないので、空腹しのぎにレイトショーを見てきました。これは、日本アニメ史に残る大傑作。ほとんど、ケチのつけどころがありません。今や、細田監督は、宮崎駿監督とならぶ、国民的アニメ監督の地位を確立したと言えるでしょう。
テーマは、恋愛、子育て、子供たちの成長と自立という普遍的なもの。これまでに多くの人間ドラマで描かれてきたテーマをとりあげるにあたって、細田監督が用意した決め球は、おおかみこども、というユニークな設定。この着想はすばらしい。何しろ、小さなころの、雪と雨の二人のかわいらしいこと。このキャラクターを見ているだけでも、幸せな気持ちになれます。舞台は、北アルプス?の大自然。風景美術もすばらしい。
導入部分の、花の一目惚れから衝撃の告白シーンまでのシークエンスでは、二人の日常が淡々と描かれますが、心理描写が細やかで、まるで小説を読んでいるかのよう。アニメでもここまで描けるんだと感心しました。細田監督は、人間描写がうまい。
やがて訪れる別離のシーンは、ぞっとするほど酷い。
長野?への転居は、サツキとメイの引っ越しを連想させますが、描かれているのは架空世界ではなく、現実世界。田舎のおじいちゃん、おばあちゃんたちとの近所づきあい、畑づくりの苦労などが丁寧に描かれています。ここでも人物描写がうまいので、退屈しません。
物語がダイナミックに展開するのは、雨と雪が少年、少女として、自分の運命と向き合い初めてから。誰にも訪れる人生の決断のとき。それを、おおかみこどもという奇抜な設定を生かして、感動的に描いています。
おてんばだった雪が、しとやかな、恋に涙する少女へ。いじめられっ子だった雨は、自分の孤独な使命を受け入れて自立する、たくましい青年へ。
二人の選択は、互いの信念をかけた激しい喧嘩に。この喧嘩ではじめて雨は雪に勝ち、自立へのたしかな一歩を踏み出すのでした。
雨と雪という名前は、絶妙です。それは、映画を見ればわかります。
これ以上知りたい方は、映画館へ。
雪の幼年時代の声優(大野百花)、および花役の宮崎あおいは、出色の出来映え。私は実は、宮崎あおいをとくにすばらしいと思ったことがなかったのですが、評価が変わりました。花の顔もどことなく宮崎あおいに似ていて、声との相性も良かった。
唯一ケチをつけたいのは、花の夢の中での「再会」シーンのバックが、セイタカアワダチソウだったこと。細田監督の細部へのこだわりも、さすがに外来種と在来種の峻別にまでは、およばなかったようです。
これ以外は、完璧。大満足です。

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7/26追記:ノラネコさんが絶賛されている。
http://noraneko22.blog29.fc2.com/
傑作だとは思ったが、ノラネコさんがここまで絶賛されるとは・・・。確かに、金字塔なのだと思う。
ノラネコさんの見事な映画評を読むと、私の記事はまるで子供の感想文だ。携帯しか使えない状態で記事をアップしたので、あまり長い感想は書けなかった。できればもういちど観て、もっと深めた記事を書いてみたい。しかし、その時間がとれるだろうか。