『花の性』再版

数年間絶版になっていた『花の性』の重版が決まった。ありがたいことだ。この本は、東大から九大に移る前に、研究の面白さを次の世代に伝えるために書いた。自分が面白いと思ってやってきた研究をまとめた「自叙伝」的な内容の本だが、BOXの解説をつけるなどして、できるだけ一般性を持たせた。この本を読めば、植物の進化生態学や種分化の研究に必要な知識が自然と身に着くようにと考えて書いた。「自叙伝」的な作り方にしたのにはいくつかの理由がある。そのひとつは、この時期(もう15年あまり前)に書いておかなければ、研究の現場での新鮮な興奮を伝える文章は書けないだろうと考えたことだ。その判断は正しかった。今の忙しさの中では、とても『花の性』のような文章は書けない。『花の性』を読むと、研究に没頭していたころの興奮が、今の私にも伝わってくる。
重版によって、いまの大学院生の世代に『花の性』を読んでもらえれば、嬉しい。
どこかに、不等号のミス、あるいは大小関係の説明が逆になっている箇所があったと記憶しているのだが、見つからない。そのほかにも校正もれがあるかもしれない。どなたかお気づきの方があれば、教えてください。
昨日は、岡崎コンファレンスセンターで開かれた、新学術領域「複合適応形質進化の遺伝子基盤解明」の研究会に出た。マイナーな生物のゲノム研究の話が聞けて、面白かった。「これが私の研究材料のテトラヒメナです。微生物学ではテトラヒメナはマイナーな研究材料ですが、午前中からの話を聞いていると、テトラヒメナがメジャーな生物に思えてきました」というIさんの紹介に笑った。
今日はこれから岡崎を発ち、小牧発10時のフライトで福岡に戻る。