低線量での発がんリスクに関する文献

放射線医学総合研究所のウェブサイトにある「100ミリシーベルトの被曝における発がんリスクの増加が0.5%程度」の根拠と思われる文献をようやく見つけた。原子爆弾への低線量被爆者の発がんに関する疫学的分析結果を報告した論文である。

ほぼ同じ図が、次のPNASの総説に転載されている(この文献からたどって、上記を見つけた)。

  • Brenner et al. (2003) Cancer risks attributable to low doses of ionizing radiation: Assessing what we really know. PNAS 100: 13761–13766.

上記の論文を見ると、「0.5%程度」というのはやや不正確で、0.75±0.25程度である。ただし、リスクの平均値が100ミリシーベルト前後で1倍〜1.15倍とふれているので、「0〜15%の増加」と書く方がより適切だろう。統計的検出限界ぎりぎりのところの値なので、このくらい幅を持たせて書く方が良いと思う。
興味深いのは、被曝レベルが200−500ミリシーベルトの間では、発がんリスクは1.2倍程度にしか増えないことだ。500ミリシーベルトをこえると、発がんリスクは被曝線量に比例して増加する。それでも、2000ミリシーベルト(2シーベルト)で、2.5倍(喫煙のリスクレベル)。喫煙はおそろしい。