セシウム137汚染

残念ながら、半減期の長いセシウム137汚染が、現実の事態となった。

20日午後0時40分に(福島県飯舘村で採った土1キロあたりから、セシウムが16万3千ベクレル、ヨウ素が117万ベクレル検出された。

ヨウ素のほうは、半減期が8日なので、注意して対処すれば、短期的な問題で終わる。もちろん、福島原発の状況が収束することが条件だ。まだ予断を許さない状況だが、電源が確保され、希望が見えてきた。
しかし、セシウム137は半減期が30年と長いため、汚染は長期にわたる。(→ウィキペディアの解説)。

によれば、

10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.13ミリシーベルトになる。また、1mの距離に100万ベクレルの小線源があると、ガンマ線によって1日に0.0019ミリシ−ベルトの外部被曝を受ける。
旧ソ連原発事故では、広い地域が1m2あたり50万ベクレル(5.0×105Bq)以上のセシウム-137で汚染された。そのような場所では、セシウム-137のみから1年間に1ミリシーベルト以上の外部被曝を受ける。事故直後は、短寿命放射能の存在と内部被曝の寄与で年間10ミリシーベルトをはるかに超える被曝を受けていた。

で解説したように、100ミリシーベルトまでの被曝なら、発がん率の増加は検出できない。したがって、いたずらに不安になるほうが健康に悪い。
内部被曝に関しては、チーム中川(中川恵一さん)の解説がある。

現状では、ヨウ素131に関する解説だけだが、考え方は参考になる。私たちは日常的にカリウムによる内部被曝を受けており、その強さは6,000Bq[ベクレル]。これに比べてどれくらい多くの線量を被曝することになるか、という評価が、内部被曝を考える場合のポイントだ。
セシウムが16万3千ベクレル」と万の単位の数字を出されると、怖くなるが、「10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.13ミリシーベルト」なので、発がんリスクが顕在化する100ミリシーベルトには、ほど遠い。
ただし、内部被曝は、体内に放射性物質がある限り続き、セシウム137は半減期が30年と長いので、屋外での一過的被曝よりもタチが悪い。今後、セシウム137がある程度の量で検出された地域では、行政による健康診断を実施して、内部被曝のレベルが高い人には、治療薬(セシウム137を体外に排出する薬)を提供するという対応が必要になるかもしれない。いざというときはこのような治療も可能なので、まずは安心すること、および予防措置(http://d.hatena.ne.jp/yahara/20110318)をとることが重要だ。
安心と安全は違う。「絶対に安全」ということはない。道路を歩いていても事故にあうリスクがあるし、今回のような震災にみまわれるリスクも、ゼロではない。しかし、ごく稀におきる不運に毎日おそれおののいていては、かえって体に悪いのだ。この状況では難しいことかもしれないが、平常心を保ち、健康に暮らすことが何よりも大事である。避難しなければならないレベル、治療しなければならないレベルに達しない限り、安心することが大切。その意味で、「いまのレベルなら健康被害を心配する必要はない」という政府の説明は、適切だ。