どんぐり拾い、カンボジア、事業仕分け

3つの話題は関係ないように思われるかもしれないが、私の中では深く関係している。
日曜日に新キャンパスでのどんぐり拾い(福岡グリーンヘルパーの会が実施しているイベント。小中学生と一緒に森づくりをする活動)で小中学生相手に15分ほど話をした。そのときに、「先週、カンボジア林野庁長官にもこの生物多様性保全ゾーンを見に来てもらった」ことを紹介した。カンボジア林野庁・ゴム庁と九州大学との学術交流協定調印式の翌日、伊都キャンパスの生物多様性保全ゾーンに長官を案内した。森林移植の現場を見てもらい、どんぐり拾いなどの森づくり活動についても紹介した。
今日はそのカンボジアにやってきた。明日から、カンポントム省の森林の固定試験地で、グローバルCOEの実習を実施する。「実習」といっても、その成果を論文にまとめることを前提にした、本格的な調査である。カンボジア林野庁との共同研究もかねており、カンボジア林野庁スタッフも参加される。DNAバーコーディング、機能形質データベース作成など、新たな方向で研究を進め、基礎研究として先端的な成果を出すとともに、カンボジア樹木図鑑編集などの実用的な課題にもこたえる。学術交流協定調印後最初の調査ということもあって、林野庁からも期待されている。「実習」に参加している大学院生にとっては、単に熱帯林のフィールドが体験できるというだけでなく、持続可能な林業をめざすカンボジア林野庁スタッフとの協働作業を経験できる。大学院教育としても、研究拠点形成としても、また外交上も、きちんと評価していただけるだけのことはしているつもりだ。
さて、そのグローバルCOEが、明日18日に事業再仕分けの対象になる。事前のヒアリングで、150拠点は多すぎるとか、RAとして雇用されている大学院生の成果が見えないなど、厳しい意見が出たそうだ。
事業仕分けでは、150拠点は多すぎる、日本に国際的拠点と呼べるものがそんなにたくさんあるのか、などという予算を削るための主張が前面に出され、そもそも日本の大学院教育をどうするか、拠点形成をどうするかという政策的な判断はしない。このシステムは、政権交代後に前政権の予算を再検討する方法としては一定の役割を果たしたと思うが、今度の予算は、与党がたてた予算だ。それを仕分けする矛盾はすでに新聞でも問題になっている。
文部科学省の鈴木副大臣らは、大学・大学院の教育研究のあり方について、しっかりした判断をしたうえで、予算要求をされていると思うし、その背景には、総合科学技術会議をはじめとして、科学者側でのさまざまな検討や評価がある。そのような検討・評価の積み重ねを蹴っ飛ばして、「見直し」とか「廃止」と判定するのは、与党としての責任を果たしているとは言えないだろう。
与党として政権をあずかっているのだから、もうそろそろ、大人の対応をしていただけないだろうか。