がんばれ文部科学省

政策コンテストにかかる予算のパブリックコメントが実施されている。さきほど、環境省の競争的資金に関する意見を送った。続いて文部科学省の事業のチェックをはじめたところ。文部科学省では事業の必要性・事業内容をアピールする動画を配信している。これは関係者必見だ。
まずは、「強い人材」育成のための大学の機能強化イニシアティブ。説明者は鈴木寛副大臣
http://www.youtube.com/watch?v=wV6WJo8rYbw&feature=player_embedded
鈴木副大臣鳩山内閣時代にかなり良い仕事をされていたので、菅内閣でも活躍を期待していた。まず、高等教育への公財政支出OECD諸国の平均がGDP比10%に対して、日本は5%で27位である事実を指摘。世界各国が高等教育への公財政支出を増やしている中で、日本は減らしてしまった。これと比例するように、日本の経済力(国民一人あたりGDP)は、2000年の世界3位から、2008年の23位にまで低下してしまった。高等教育への公財政支出と日本の経済力を関連づけた説明は、論理的には飛躍しているが、高等教育への公財政支出の増額が急務であることを短い時間でアピールするプレゼンテクニックとしては、効果的だ。
続いて、米国に留学している外国人学生数のグラフを示し、急増を続けるインド・中国がそれぞれ10万3千人、9万8千人に達しているのに対して、日本はといえば減少を続け、2万9千人。自然科学分野での博士課程取得者数は、アメリカの2万2千人に中国が猛追し、2万900人とほぼ並んだ。一方の日本は、7150人。
続いて、国立大学運営交付金私学助成金予算が減り続けたことを示すグラフを使って「国立大学や私立大学は瀕死の重傷」という評価。この状況を変えるために、文部科学省は国立大学運営交付金の2.8%増を要求していると説明。
鈴木副大臣の説明を聞いて、涙がでるほど嬉しかった。これまで政府が国民に向けて高等教育への公財政支出の増額の必要性を直接語りかけたことはなかった。鈴木副大臣の説明は、高等教育に責任を負う立場からすれば当たり前すぎる内容だが、これまでこの内容を正面から主張してくれるのは、ほとんど共産党だけだった。政権交代前の民主党は国立大学運営交付金の削減をやめると主張していたので、政権交代によって高等教育への公財政支出が改善されると、多くの大学関係者は期待していた。しかしこの1年間、その期待は裏切られたといってよい。一律10%削減というニュースを耳にしたときには、これなら自民党のほうがはるかにましだったと、大学関係者のほぼ全員がそう思ったに違いない。
鈴木副大臣の説明は、民主党政権が本気で高等教育のことを考えてくれるかもしれないと期待を抱かせるものだ。
しかしまだ安心はできない。政策コンテストで文部科学省が敗北すれば、国立大学運営交付金は、2.8%増どころか、5%くらいは減ってしまうからだ。
ここはぜひ、パブリックコメント文部科学省の事業を応援して、高等教育の現状改善を実現したいものだ。

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注:政策コンテスト
民主党政府は、各省庁の予算要求を1割カットし、1割を集めた予算枠=「元気な日本復活特別枠」について、政策コンテストで採否・充足率を決める方針である。「政策コンテスト」の判断材料として、現在「国民の声」(パブコメ)が求められている。「国民の声」(パブコメ)の数が少しでも多いほど、その予算への国民の支持率が高いとみなせる。そこで各省庁では、「国民の声」(パブコメ)を集めるために、「票集め」競争をしている。上記の動画もそのためのもの。
各省庁では、政策的重要性が高く、削りにくい予算を政策コンテストにかけるという戦術をとっている。たとえば防衛庁は、米軍基地の予算を「1割」(元気な日本復活特別枠)に入れている。マスコミの報道によれば「削れるものなら削ってみろ」という強気の姿勢。
文部科学省は、若手支援の予算(科研費の若手枠や、学術振興会特別研究員の予算など)、大学の基幹的経費(運営交付金の一部など)などを政策コンテストにかけている。環境省は、環境研究総合推進費などの競争的資金を政策コンテストにかけている。
このように、どの省庁も削りにくい予算を政策コンテストにかけているので、政策コンテストは激戦となる。最終的には「政治主導」で決められるだろうが、「国民の声」(パブコメ)が果たす役割も決して小さくはないだろう。高等教育、あるいは環境保全に関係している方々(学生をふくむ)には、ぜひパブコメへの応募をお願いしたい。

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パブコメを送るには、以下のサイトで登録したうえで、各省庁のボタン→要望事業一覧を見る→事業名→この要望について意見を提出する、と進む。
http://seisakucontest.kantei.go.jp/index.php
私がとくに重要と思う事業のウェブページをリストしておく。

  • 「強い人材」育成のための大学の機能強化イニシアティブ

http://seisakucontest.kantei.go.jp/project/detail.php?t=1905

  • 成長を牽引する若手研究人材の総合育成・支援イニシアティブ

http://seisakucontest.kantei.go.jp/project/detail.php?t=1906

  • 環境研究総合推進費(競争的資金)

http://seisakucontest.kantei.go.jp/project/detail.php?t=2407