ツクバネカズラ科ツクバネカズラ


ツクバネカズラ科(Ancistrocladaceae)はツクバネカズラ属(Ancistrocladus)のみからなる小さな科で、熱帯アジアと熱帯アフリカに約20種が知られている。DNA配列による系統解析の結果によれば、モウセンゴケ科やウツボカズラ科と一緒にまとまる。写真の植物は、おそらくAncistrocladus harmandiiで、カンボジア低地の常緑熱帯林にふつうに見られる。現地名は、カン・マー。
若いときは左のように直立しているが、成長とともにつるに変わり、他の樹木の枝によりかかりながら、ときには水平に成長し、林内空間に広がっていく。なかなかユニークなつる植物である。
最初は科の見当がつかなかった。私が知らない科を片端から画像検索してみたところ、Ancistrocladaceaeだと判明した。台湾にも分布しており、ツクバネカズラの和名がつけられていた。
ウィキペディアの解説によれば、カメルーン産の種から発見された成分は抗エイズ薬として有力であり、このためツクバネカズラ科の植物に注目が集まっているという。文献を調べてみると、アジア産の種からも、薬効のあるアルカロイドが発見されており、日本語のウェブページだけでも3万件がヒットした。
熱帯では植物と植物食昆虫の共進化の結果、種の多様化とともに防御物質も著しく多様化している。その結果、熱帯の森林は薬効成分の宝庫である。その価値を見積もるための研究が急務となっている。