キワタ科の一種


キワタ科の一種。キワタ科は世界の乾燥熱帯に広く分布し、乾季にすっかり葉を落とした状態で、大型の花を咲かせる。メキシコで見た種(属はおそらくPseudobombax)は、枯れあがった林の中で咲いていたので、よく目立った。カンボジアで見た種は、まだ多くの木が葉をつけている状態で咲いていたので、探すのに手間取った。右の写真(花)をとった木では、葉はすべて落ちていた。左の写真は、たまたま葉をまだつけていた木を見つけて撮影したもの。現地名はロカール
乾季の終わりには、大型の果実が割れて、長い綿毛を持つ小型の種子が無数に散布される。「木綿」という和名は、この性質にちなんだものだろう。
カンボジアの種には、広く栽培されているBombax ceibaの学名があてられているが、それとは明らかに異なる。分類学的研究が必要だ。キワタ属(Bombax)かどうかもやや自信がもてない。
キワタ科(Bombacaceae)は、ドリアン(Durio)、マダガスカルバオバブ(Adansonia digitata)などユニークな形態の植物を含むグループで、アオイ科(狭義)に近縁である。最近のAPG分類体系では、アオギリ科、シナノキ科とともに、アオイ科(広義)に含められている。分子系統学的研究の結果によれば、キワタ科、アオギリ科、シナノキ科はどれも単系統ではないようだ。このため、アオイ科の範囲を広くとるAPG分類体系の考え方は、現実的な解決策ではある。しかし、写真の植物をアオイ科と言われると、どうもぴんとこない。いちど細分された科の概念になじんでしまうと、広義の概念は使いにくい。もっとも、多くの市町村合併のように、時間がたてば気にならなくなるのかもしれない。