ニクズク科ニーマ


D3のNさんが今年度中に学位を取得するためには、明日(今日)の生物科学部門運営委員会で学位審査会設置の承認を得る必要がある。その後27日までに事務に必要書類を提出し、2月10日の教授会で学位審査会設置の承認を得たあと、審査会を開催し、3月の教授会でその報告をして、審査結果が承認されれば、めでたく学位取得となる。
原稿完成は午前3時くらいになるだろうと覚悟していたが、午前1時には印刷・仮製本された「学位論文」が完成した。年度末の教務日程のひとつの山をこれで越えた。これから、修士論文卒業論文と、締め切りは続くが、ひとまずほっと一息つけたというところである。
カンボジアでは、ひさしぶりに熱帯アジアの樹木を調べたので、しばらくは教務日程の合間に、その報告を書こうかと思う。「ひさしぶり」というのは、実に30年ぶりのことだ。私は博士課程大学院生時代に3ヶ月、東大助手になってすぐに3ヶ月、通算6ヶ月間タイに滞在し、タイ全国の調査旅行に参加して、熱帯アジアの植物にふれた。しかし、それからは、北米、メキシコ、コスタリカベネズエラ、ブラジルと新大陸のヒヨドリバナ類調査に時間を割いたため、アジアとはご無沙汰してしまった。
しかし、20代に覚えた熱帯アジアの植物の記憶は、幸いにしてまだけっこう残っていた。カンボジアの樹木を見て、科や属の見当がつくものが結構あった。
写真は、ニクズク科(Myristicaceae)のニーマ属(Knema)の一種である。おそらく、Knema corticosa Lour.
常緑の低地熱帯林の森林プロット内にふつうに見られ、現地ではスマクロベイと呼ばれているが、学名不詳として扱われている。今回、花を見ることができたので、属まで(ほぼ種まで)同定できた。
ニクズク科と言われてもピンとこない人がほとんどだと思うが、ナツメグ(Myristica fragrans)はニクズク属の常緑高木である。種子をスパイスに使う。スマクロベイは、現地では薬用に使われているようだ。
カンボジアの人たちは、多くの樹木を区別し、薬用・食用・建材など、多様な用途に利用している。いまでも森の植物多様性は、カンボジアの人たちの生活に欠かすことのできない自然の恵みだ。