入試センターテスト:知識を問う「歴史」と考えさせる「地理」

今日は入試センターテストの監督をした。監督中は、試験問題を解くのが唯一の楽しみである。
「歴史・地理」の問題で、「世界史・日本史」と「地理」の出題傾向が対照的な点が印象に残った。「世界史・日本史」の問題は、あいかわらず暗記した知識量を問う問題が多く、問題文を読んでも、ちっとも面白くない。これとは対照的に、「地理」では、地図やグラフ、統計資料をふんだんに使い、データをもとに考えさせる問題が多く、問題文を読むだけでも面白い。たとえば、第3問、問4では、木材の伐採量・輸出量・輸入量を、上位10カ国について円で表示した3つの世界地図を示し、どれが伐採量・輸出量・輸入量かを選ばせている。日本に円グラフが表示されている地図は一枚だけなので、この地図が輸入量だということはすぐわかる。この世界地図は、日本よりも中国やアメリカ合衆国の輸入量が多いことも示していて、興味深い。残る2つのどちらが伐採量・輸出量かは、よく考える必要がある。一方の世界地図では、アメリカ合衆国に次いで、中国・インド・ブラジルなどの円グラフが大きい。もう一枚の世界地図では、カナダとロシアの円グラフが大きい。この違いに関係するヒントが問題文の「伐採量*」の注に、以下のように書かれている。「*用材のほかに燃料用を含む」。伐採量のうち国内消費と輸出の割合を規定するのは、寒さだ。したがって、カナダとロシアの円グラフが大きい地図が、「伐採量」に違いない。北欧やニュージーランドにも円グラフが書かれており、これは高緯度の国ほど伐採量が大きいという傾向をあらわしているのだろう。残る一枚が「輸出量」に違いない。このようにして判断した「輸出量」の世界地図にはブラジルに円グラフが描かれているが、「伐採量」の世界地図にはブラジルに円グラフがない。ブラジルでは、伐採された木材の大部分が輸出されているのだろう。このように、解答には直接関係のないことまで考えさせられる。
第4問は、村落や都市の形態的パターンを抽象化した模式図を示し、どの地域の村落・都市かを考えさせる問題だ。ここには「モデル化」という自然科学の方法が使われている他にも、考えさせる工夫がこらされた問題が多くて、非常に好感を持った。
私は「世界史」と「日本史」を選択して受験した。もともとは地理よりも歴史に興味があったし、今でも歴史は好きである。しかし、今回の入試センターテストの問題を見る限り、いま、高校で社会科を一科目選択するなら、地理を選ぶのがもっとも楽しそうだ。