DIVERSITASでの議論と生物多様性観測国際ネットワーク

DIVERSITAS科学委員会は、4日間の日程を無事終了した。
昨日は、COP9に向けての「生物多様性観測国際ネットワーク」(GEO BON)提案文書に関する議論をした。草案では、Ecosystem, Species, Genesの3つのレベルについて生物多様性観測の方向性が書かれているが、Genesのセクションが時代遅れだと感じたので、コメントをした。また、日本の植物RDB編集の経験から、データのquality controlのあり方などについてもコメントをした。発言をすると仕事がまわってくるという事情は国内だけではないようだ。結果として、4月8-10日にポツダムで開かれるワークショップに招待されてしまった。
明日帰国の途につくのだが、約1週間後には再びヨーロッパに飛ぶことになった。こうなるともう、科学者というよりも外交官である。しかし、気候変動に関しては、科学者が積極的に外交に取り組んだので、世界が動いた。生物多様性変動に関しては、科学者による外交努力が不足している。DIVERSITAS科学委員会に集まっている科学者はみなそう考えていて、「生物多様性観測国際ネットワーク」の提案文書起草に献身的な努力をしている。2010年にCOP10を開催する日本の科学者が誰もこの国際事業に関わっていない状態は、明らかに好ましくない。
というわけで招待を受けてポツダムに出かけることにしたが、私だけが個人的に対応している状態も好ましくない。生物多様性観測に関しては、日本国内でさまざまな取り組みがあるが、もうすこし国際的な視野で対応する必要があると痛感した。
今日は、2010 Target (2010年までに生物多様性の減少を有意に食い止める)に関する議論をした。日本の植物RDBの評価方法などについて10分程度のプレゼンをした。インパクトはあったが、やはりまだ特別視されている。南アフリカで同様な取り組みが進んでいることに言及した。
メッシュの重要性のランキングに関しては、complimentarityを考慮に入れた評価の必要性を何人かの研究者から指摘された。メッシュ間のcomplimentarityを考慮に入れた評価は海外では定着しつつあるので、その方法を使っていないと、それだけで論文がリジェクトされそうだ。
今回の会議でも、stewardshipやmandateという言葉が飛び交った。合衆国から参加しているMさんが文化の違いに関心をお持ちのようだったので、日本にはこれらの言葉に相当する単語がないという話をした。日本人の自然との接し方は、stewardshipではなく、むしろfriendshipだという説明をしたところ、これがきっかけになって議論が熱をおびてしまった。Valueをどう考えるかという話から、capitalismの限界をどう克服するかという問題にまで話が及んだ。このような議論では、もちろん英語力も要求されるが、結局は問題をどこまで深く考えているかが問われる。まだまだ詰めが甘いと反省させられた。
それにしても、科学委員会に出てくる科学者には、さすがに論客が多い。科学委員会で4日間も議論につきあった結果、ぐったりと疲れた。