ハプスブルク家のアゴ

明日の「集団生物学」の授業の準備を完了。ノートパソコンにファイルをコピーし、問題なく作動するところまで確認した。前日にここまでやっておかないと、当日にはいろいろとトラブルが起きかねない。
週3回授業の苦行も、あと少し。「集団生物学」は、明日が最終回の一回前。いよいよ佳境だ。「保全生態学入門」をテキストにしているが、6章の前半までで終える計画である。明日は、「遺伝的劣化のメカニズム」について話す。医学部生中心のクラスなので、できるだけヒトの事例を題材をとりあげている。明日は、ハプスブルク家アゴを話題にする。
文献をいろいろ集めてみたが、次の論文は、とても参考になった。

  • Chudley (1998) Genetic landmarks through philately – The Habsburg jaw. Clinical Genetics 54: 283-284.

カルロス1世、フェリペ2世、フェリペ3世、フェリペ4世、そして重い障害を背負って生まれたカルロス2世の肖像画をもとにしたスペインの切手が掲載されていて、なかなか気が効いている。みんなよく似たアゴを持っている。「燃える闘魂」のおじさんに似ているのだ。
カルロス2世が子供を残すことなく世をさったあと、スペイン継承戦争が起き、スペイン・ハプスブルク家は滅ぶ。その血は、スペインのマリア・テレサを通じてブルボン家に受け継がれるが、その家系もルイ16世とマリー・アントワネットの処刑という悲劇的運命をたどる。
ヨーロッパの歴史を語るときに必ず登場するこのハプスブルク家は、財産を守るために血縁婚を繰り返した。その結果、栄光の歴史の陰で、遺伝的劣化が顕在化した。カルロス2世は、その象徴的存在である。
授業の最後に課すレポートの課題は次のとおり。

医学の発達によって人間の寿命がのびると、人間集団における有害遺伝子の保有量は増大すると考えて良いか。
増大する、増大しない、いずれかを選び、その理由を述べよ。

最終回の次々回は、この課題について受講生が書いた内容をとりあげて、授業を組み立てる。もちろん、優生学について踏み込まないわけにはいかない。
当初構想した着地点にもうすこしでたどりつくのは嬉しいが、しかし、週3回はつらい。
今日はひさしぶりに0時を過ぎずに帰宅できそうだ。