ヤクシマタネツケバナ

yahara2006-10-16

このタイトルを見て、そんな名前は始めて聞いたという人も多いことだろう。それもそのはず、ここで始めて使う名前である。
一昨年、屋久島固有種ヒメキツネノボタンの自生地を確認に出かけたときに、渓流沿いの苔むした岩の上で、ヒメキツネノボタンやヤクシマオオバコと混生している小型のタネツケバナ類を見つけた。50株程度の小集団である。新種ではないかと思ったが、詳しく調べる余裕がないまま、今日に至っている。3年間のうちに、「新種ではないか」という直感は、確信に近いものに変わった。そこで、この植物に、ヤクシマタネツケバナという名前をつけようと思う。
今年の屋久島調査で、調査隊メンバーの布施さんと田金君が、容易には近づけない上流部の沢で、ヤクシマタネツケバナがもっとたくさん生えている場所を見つけてくれた。その場所には、ヒメキツネノボタンも、たくさん生えていたという。
写真は、布施さんが撮影されたもの。背景のコケと比べてみれば、ヤクシマタネツケバナがいかに小さな植物かがわかる。花茎は高さ2-3cm。
群生地を見たい!
しかし、私はまだその場所を訪問できずにいる。環境省環境改善技術等開発推進費によるプロジェクトは今年度で終わるが、来年もぜひ屋久島に出かけて、「その場所」に足を運び、ヒメキツネノボタンやヤクシマタネツケバナの大群生を見てみたい。
フィールドワーカーの楽しみの一つは、独自の研究材料を発見し、その発見をうまく生かして研究を展開することである。ヤクシマタネツケバナを含むタネツケバナ属は、モデル植物であるシロイヌナズナに近縁であり、種分化やエコゲノミクスの研究材料として、非常に有望だ。
私自身は、ヤクシマタネツケバナを詳しく調べる余裕が当面はないが、この記事を読んで興味を惹かれ、研究してくれる人がきっといることと思う。
それにしても、屋久島は宝の島である。まだまだ、未知の植物が隠れていそうだ。