週3回の授業スタート

月曜夜にパリから戻り、火曜日は「生態学I」と「生物学通論」、水曜日(今日)は「集団生物学」の講義をこなした。
3つの異なる講義を同時平行で行うのは初めての体験だ。混乱しないように、メモをしておこう。
生態学I」は一年生向けの専門科目(理学部の講義)。毎年担当している。
教科書は、Evolutionary Annalysisで、英語も交えての講義。生態学の基礎をしっかり勉強してもらうのが目標なので、ほぼ毎回レポートを課す。
初回は、教科書を使わずに、パワーポイントを使って、「生態学とはどんな学問か」についてごく初歩的なイントロダクションをしたあと、指数増加モデル、ロジスチック成長モデル、競争方程式の説明。あまり詳しくは説明せずに、いきなりレポートを出してしまう。これらの内容は、自分で計算したりグラフを書いたりしてみないと、正確な理解にはなかなか到達できない。不親切でも、授業では簡単な説明で済ます。あとは自分でがんばって理解しなさい、という方針。
来週の講義のときに、レポートを出してもらったあとで、よくあるミスについて説明する。
この科目では「学生ウケ」はねらわず、専門的な内容について直球勝負をする。
「生物学通論」は、高校で生物を受講しなかった学生向けの、入門的な講義。「生態学I」とは異なり、受講生にやさしい講義をする必要がある。
今日は、その第一回目なので、「生命とは何か」「生命体と非生命体の違いは何か」という問題を学生に投げかけて、答えてもらった。答えはひとつではないので、回答に応じて、臨機応変に授業をする必要があるが、この点に関しては経験を積んでいる。
今回は、いきなり「繁殖をする」という回答が出たので、じゃあ、繁殖と増殖はどう違うのだろう、という展開になった。性の話に持っていけるので、私としてはもっとも対応しやすい展開である。
これまでの経験では、「生命体は死ぬ」とか「代謝をする」という答えが先に出ることが多かった。
生命体の本質は、物質(ハードウェア)か、情報(ソフトウェア)かという話もした。
次回からは、3回で、分子生物学の初歩(セントラルドグマと遺伝子の発現調節)を講義する。私が担当するので、もちろん、進化的な見方で、味付けをする。
「集団生物学」は、全学共通科目のひとつで、4つのクラスが開講されている。私は、はじめて担当する。
全学共通科目であるこの講義では、受講生の7割程度が満足する内容を追求したい。
今日は、どの学部を担当するのか、受講生が何人いるのかがわからない状態で授業にのぞんだので、教科書もプリントもなし。授業が始まるまで、どう組み立てるか考えがまとまらず、不安だった。
私が担当したクラスは医学部だった。医学部では、この科目は必修だそうだ。医学を学ぶ学生が、集団生物学を学ぶのは、なかなか意義深いことだと思う。
医学部生が相手ならばと、私が性の進化について研究しているという自己紹介から初めて、「マラーのラチェット」との関連で「優生学」について、「赤の女王」との関連で「病原体と宿主の共進化」について話した。
最後の15分を使って、授業の感想を書いてもらったが、概ね好評だった。とくに、受講生に質問をしながら講義を進めるやり方は好評だった。
シラバスで「保全生態学入門」を教科書に指定しているので、来週からはこの教科書に沿って講義をする。ただし、医学部生向けの味付けをしようと思う。「保全生態学入門」第一章ではいきなり倫理の問題が登場する。生命倫理にもふれながら、科学と倫理の関係について話すことにしよう。一回分の講義の構成、学生に質問する課題、最後のまとめ方について、事前によく整理しておく必要あり。次回は10日だが、学内の書類の締め切りと重なっているので、ちょっとつらい。
15日からは、月曜日の「生態学II」もスタートして、週4回の授業を担当することになる。「生態学II」も、はじめて担当する。かなり準備が必要だ。