大学院の転換点

読売新聞の朝刊一面は、5段抜きで「大学院を抜本改革」という見出しを掲げている。小見出しには、「講座制廃止 ”徒弟制度”一掃 文部省、5年かけ」とある。
ほぼ同じ内容の記事が、読売オンラインに掲載されている。
「21世紀COEプログラム」に代わる新たな策を実施する、というから、この改革は、間違いなく大きな動きになる。日本の大学院は、大きな転換点を迎える。
この記事の背景となっている、「大学院教育振興施策要綱」については、文部科学省のウェブサイトの3月30日づけ報道発表ページで、PDFファイルがダウンロードできる。
九大の大学院重点化に際して、助教授ポストを教授に振り替えて、従来の講座制を修正しようと提案したことがあるが、かなりリベラルな生物科学部門内ですら、支持は得られなかった。その主要な理由は、教授が背負っている教育・研究・事務の負担の大きさにある。講座制があるから、しめきりをチームワークで乗り切ったり、海外などへの出張に際して授業や事務の代理を頼んだりできる。
学部教育や大学院の教育・研究は、講座制によるチームワーク抜きには成り立たない。講座制を廃止すれば、教育・研究の水準は低下する、というのが、大部分の教授の意見だった。
この現実は、確かにある。しかし、一方で、講座制にさまざまな弊害があることも事実である。教育・研究の水準を維持し、さらに向上させながら、一方で講座制の弊害を解決する方向をめざす必要があるが、日々の教育・研究に忙しい教官に、その改革を迫るのは、かなり酷な話でもある。
しかし、「21世紀COEプログラム」に代わる財政支援策が、「講座制廃止」を競わせる形で実施されれば、大学側は浮き足立つだろう。
大きなシステム改革には、つねにコストとベネフィットがつきまとう。コストとベネフィットについて冷静に判断しながら、実のある改革を進めたいものだ。