タンポポと性の進化

琉球大学で開催されている日本植物分類学会大会に出ている。
昨日聞いた研究発表で、一番私に興味深かったのは、芝池さんのチームの、在来タンポポセイヨウタンポポの交雑の話。この交雑現象が見つかったのは、私が小石川にいたころだから、かれこれ四半世紀前の話である。その後、愛知教育大学の渡邊さんや、農業環境研究所の芝池さんの研究により、雑種が全国にひろがっていること、雑種はセイヨウタンポポと同様に無性的に種子を作り繁殖すること、一見セイヨウタンポポに見える植物の大部分は雑種であること、さらに雑種には3倍体と4倍体があることなど、興味深い事実が次々に明らかになってきた。
今回の研究発表で、4倍体雑種では単一のクローンが全国に広がっているが、3倍体雑種のクローンは地方ごとに異なっていることが、これまで以上に明確になった。これは、各地方で繰り返し交雑が起き、組換えを通じて地方の環境への適応進化が起きているためだろう。この現象をもっと精密に解析すれば、有性生殖による組換えの適応的意義という進化生物学の大問題に関して、究極の回答を与えることができるかもしれない。
このテーマは私がライフワークと考えているものであり、これだけ魅力的な研究材料が登場すると、研究してみたい衝動にかられる。残念ながら、すぐにはタンポポの研究に取り組める状況にないが、将来ぜひ取り組んでみたいテーマである。いずれ近いうちに、「性の進化」の研究にカンバックを果たしたいと考えているので、構想を暖めようと思う。