特別土地保有税が森を減らす!

九大伊都キャンパス公開講座を終えて、研究室に向かうところ。
昨日の長崎グリーンヘルパー養成講座で、特別土地保有税についての質問を受けた。質問された受講生の方は、7年ほど前に、佐世保市の海に面した山林を購入された。開発せずに残したいというお考えなのだが、佐世保市から「特別土地保有税」の支払いを求められた。ミカン園にするという名目で、支払い猶予を受けてきたが、開発をしないのなら税を支払えといわれ、困っておられるそうだ。税額は数百万円にのぼり、とても払えないが、さりとて、伐採してしまうのは惜しい、何とかならないかという質問だった。
環境への配慮が求められる時代に、開発しないのなら税金を払えというのは、なかなかとんでもない話である。
そういえば、東京に住んでいたころに、都内の緑地の相続にあたり、税金が払えないために売り払われ、緑地が次々と消失しているという話を聞いたことがある。地目が山林の場合、相続税だけなら、評価額は知れているはず。「払えない」という税金は、特別土地保有税のことだったのだろうか。
ネットで少し調べてみた。特別土地保有税というのは、土地投機の抑制及び土地供給の促進を目的として、昭和48年度に創設された税制である。経済環境の変化により、平成15年以降は、課税が停止されている。しかし、現在猶予中の納税義務については、免除されない。
取得分の税額は、土地の取得価格×3%−不動産取得税相当額。また取得後10年間は、土地の取得価格×1.4%−固定資産税相当額、が課税される。
さて、受講生の方が保有されている山林を救う道はないものか。写真を見せていただいたが、海に面した里山で、竹林の侵入もなく、とてもすばらしい景観だった。
地方税法第586条2項に、「非課税土地」についての規定がある。この規定に該当する土地利用を土地保有者が計画している場合には、「納税義務の免除に係る期間」が設定され、この期間内に計画が実施されれば、特別土地保有税の徴収は免除される(第601条)。
※ この点を理解するために、第601条を10回くらい読んだ。悪文である。
第586条2項には、さまざまな規定がならんでいるが、該当しそうなものは、次の項目だ。

6.農業、林業又は漁業を営む者で政令で定めるものが、経営規模の拡大、農地若しくは林地の集団化又は農林漁業の経営の近代化を図るために取得してそれぞれ当該事業の用に供する農地、林地、採草放牧地その他の政令で定める土地

受講生の方は、この規定にもとづき、「ミカン園造成用地」として「非課税土地」の指定を受けられたのだろう。
何しろ、土地利用を促進するために作られた法律なので、「非課税土地」の規定の中に、環境保全的な配慮はほとんどない。わずかにあるのは、次の2項目。

25の2.都市緑地法(昭和48年法律第72号)第12条の規定による特別緑地保全地区内の土地で政令で定めるもの
27の5.自然公園法第31条第1項の規定により締結された風景地保護協定において定められた同項第1号に規定する風景地保護協定区域内の土地

うーむ。これでは、何ともならん。
まずは現地で、絶滅危惧種がないかどうかを調べ、保全上の価値を明確にすることが先決だろう。しかし、私はとても動けない。誰かの助けを借りたい。