遺伝子組み換え作物の開放系利用への道

日本植物学会富山大会シンポジウム「遺伝子組み換え植物の開放系研究と開放系利用:科学者は合意形成に向けてどう対処すべきか?」について、かなり長めの報告を書いた。書いている間に、モバイルカードによる接続が切れたので、もういちどつないだら、ウィンドウが上書きされて、
書いた原稿がきれいさっぱり消えてしまった。
ガチョーン
・・・済んだことは忘れよう。
シンポジウムの内容は、「生物科学」に掲載される予定なので、消えた報告に関心がある方は、そちらを参照されたい。
とはいえ、このままでは悔しいので、少しだけ感想を。
私としては、さまざまな分野の基礎植物科学の研究者が、冷静に、理性的に、そして建設的に議論を交わし、社会との対話を進めようという点での合意ができたことに、大きな感慨を感じた。
今日のシンポジウムを支えたのは、遺伝子レベルの研究を進めている基礎科学者の使命感だと思う。国民の税金で、遺伝子レベルの研究を進め、基礎科学としては大きな成果もあがっているのだが、その成果は農業や国民の暮らしにいまのところ何も貢献しない。いやそれどころか、遺伝子組み換え作物は、フランケンシュタインのような怪物と見られているのが現状だ。
庶民から見れば巨額の予算を使って研究を進めている。その成果が、「怪物」を生み出したと見られている現状が続けば、いつかは研究への支持も失われるだろう。
これまで純粋な科学の世界で研究にいそしんできた基礎科学者の間に、このような社会的意識がひろがっていると思う。
遺伝子組み換え作物」は、決して怪物ではない。適切に利用すれば、私たちの生活に大きな恩恵をもたらし得る「果実」なのである。
私は、環境に対する負荷を下げるうえでは、食糧自給率を向上させることが重要であり、そして食糧自給率を向上させる方策のひとつとして、たとえば除草剤抵抗性遺伝子を組み込んだGMダイズの栽培は、有力な選択肢であると考えている。