ほげる・ほがす・ほげた見方

A page of hoge」に「ほげる」という熊本方言があることが紹介されているが、この言葉は、福岡でも長崎でも使われる。ネットで検索したところ、宮崎や鹿児島でも使われているようだ。
「ほげる」とは「開いている」という意味で、穴に対してだけ使う。

  • 「穴のほげとう」=「穴が開いている」

「ほげる」は自動詞だが、「ほがす」は他動詞。つまり、

  • 「穴ばほがす」=「穴を開ける」

というように使う。
これらの表現は、小さな穴にも、大きな穴にも使われる。たとえば服に小さな穴が開いているときにも、地面に大きな穴が開いているときにも、「穴のほげとう」と言う。
しかし、印象として強いのは、大きな穴の場合である。昔は畑の近くなどに、土を掘ったために、大きな穴が開いていることがよくあった。子供のころにそういう穴に落ちてしまった経験は、私の世代なら誰でもあるのではないか。そういうとき、
「ちくしょう、穴のほげとった!」と絶叫した覚えがあるに違いない。
今なら、「ほげ〜、ほげ〜」と大声をあげるところだろう。
ちなみに、「ほがす」は「うがつ」は同じ意味である。両者はおそらく同じ起源の言葉だろう。「うがつ」は、「うがった見方」という表現においてよく使われる。穴を開けて、裏側から見るような見方、という意味である。ネットでは、この表現を「堀り下げた見方」「鋭い見方」と解説しているケースや、make the penetrating observationと訳しているケースが見受けられる。これらは誤解だと思う。
「うがった見方」とは、英訳するならmake the peculiar observationだろう。あるいは、「うがつ」という言葉の意味を生かしてmake the too penetrating observationと訳したほうが、ニュアンスがうまく伝わるかもしれない。
「うがった見方」を博多弁に訳せば、「ほがした見方」ということになるが、実際には「ほげた見方」であることが多い。
これから、「うがった見方かもしれませんが、・・・」と言われたときには、「それはホゲた見方ですね」と言ってみようかな。
前にも書いたことがあるが、「うがった見方」はあまり信用しないほうが良い。そういう見方は、だいたいどこか、ホゲているものである。