オープンキャンパス

今日は、九大構内に高校生があふれかえった。
10時半すぎに、生態科学研究室訪問希望者を迎えに、生物科学部門の説明会会場に向かう。
部門全体の説明を聞いた高校生を、各研究室の担当者が引率して、各研究室を見せて、説明をする。幸いにしてというべきか、生態研は毎年見学希望者が多い。
今年は、圃場に連れていって、ハマカンゾウやF1・F2雑種の花を見せて解説をしようと考えた。幸い、部門説明会会場から圃場までは、一本道である。
部門の説明会会場の玄関口で、「では、生態科学希望者は私について来てください」と声をあげて、玄関を出て、しばらく歩いた。後ろがちゃんとついてきているかどうか確認するために振り返って、仰天した。
私の後ろに続く長蛇の列の最後尾は、まだ玄関から出ていない。前回の倍をこえている。
さらに少し歩いて、振り返った。まだ最後尾は玄関の奥である。
結局、私についてきたのは、70人くらいだったろうか。
圃場で20分ほど熱弁をふるったあと、携帯電話で事務に連絡をとって、緊急に講義室を空けてもらった。いつもは研究室を訪問してもらうのだが、この人数では、到底無理だ。
パソコンをとってきて、手持ちのパワーポイントファイルをいくつか使って、1時間ほど、講義をした。こういうときは、市民向けの講演のキャリアが役立つ。
講義のあとで、いくつかの質問を受けた。
「どんな生き物でも研究させてもらえるのか」
研究室配属前の学生からもしばしば受ける質問である。私の答えはいつものとおり。
「学生の自主性を尊重している。ただし、生き物へのあこがれだけでは研究はできない。鳥をやりたいといっても、ふつうに見られる鳥の区別もできないようでは、鳥の研究を始めるのはむつかしい。研究したい生き物があるのなら、その生き物について、自分のキャリアを積み上げてきてほしい。」
午後も同じことの繰り返し。午後は、人数が減ったが、それでも20人はいただろう。
研究室に直接押しかけて、大学院生の話を聞いた高校生もいた。
昼に研究室に戻ると、熱心な高校生が残っていて、しばらく話をした。
ありがたいことではあるが、来年からは、特別体制を組まないと、とても対応しきれない。
卒業生で高校教師をしているA先生が、昼休みに部屋を訪ねてくれた。高校生との話を終えてから、しばらく旧交を温めた。
高校の現場では、どの大学に何人受かったかが厳しく問われ、高校生をどう育てるかは二の次になっているという。授業をしているときを除けば、教師をしている気がしないそうだ。
何でも数字で評価される世の中だ。
高校の評価は、受験実績。大学の評価は、研究費収入。テレビ番組の評価は、視聴率。映画は興行成績。
みんな、むなしい。