グローバルCOE特任スタッフの待遇

グローバルCOE「自然共生社会を拓くアジア保全生態学」が採択された。これまでに2回落選し、辛い思いもしたが、2回落選したおかげで東大の鷲谷さんらと連携した提案をすることができた。環境省地球環境研究総合推進費 「トキの野生復帰のための持続的な自然再生計画の立案と社会的手続き」の代表者である工学研究院の島谷さんにも加わっていただくことができた。昨年は、工学系の申請との関係で、島谷さんに加わっていただくことができなかった。結果として理想的なメンバーでチームが組めたと思う。
昨日、交付申請書の作成を終えて、特任スタッフの公募をアナウンスした。早速、待遇に関する問い合わせがあった。この件は、公式のアナウンスで書くことは難しいので、このブログで「つぶやく」ことにする。
今年度は、申請上限額が5億円から3億円に減らされた。さらに、予算の充足率が44%だった。それでも大きな予算ではあるのだが、27名のメンバーからなる九大・東大の連携チームを運営する資金としては、かなり苦しい。備品費はすべてカットし、衛星画像など費用のかかる消耗品費をばっさり削っても、予定した待遇で予定した数の特任スタッフを雇用することはできない。チームを動かすためにある程度の日本人スタッフは必要なので、「半数は外国人を雇用して、日常的な英語環境を整える」という目標も、多少はトーンダウンせざるを得ない。
さらに困っているのは、次年度に予算が増えるかどうかわからないことだ。今年度は9ヶ月の事業期間しかないが、来年は12ヶ月ある。したがって、人件費に関しては、12ヶ月分の予算がつくものと期待したいのだが、現時点でそれをあてにして雇用して、「実は予算がつきませんでした。はい、さようなら」と首を切るわけにはいかない。雇う以上は、5年間一緒に仕事がしたい。
いろいろ思案したあげくの解決策は以下のとおり。今年度は、雇用対象者の現在の待遇を下回らない範囲で、可能な限り低い号俸で採用する。次年度に、+3ヶ月分の人件費がついたら、昇級や追加雇用を検討する。この方針で予算を組むと、今年度に関しては人件費が低く抑制されるので、特任スタッフの研究室立ち上げのための支援経費などにまわす。
したがって、「九大に応募すれば現在より待遇が良くなるのではないか」というご希望には、残念ながらすぐには応えられそうにない。
ただし、研究環境は良いと思う。チーム編成(事業推進担当者の構成)は非常に強力であり、連携の実績もある。生態学を軸に、一方では遺伝学や分類学と、他方では水文学やリモートセンシングと連携した機能的な構成になっている。統計学に強いメンバーに加え、データマイニングの専門家にも参加していただいた。ただし、社会科学者は加えていない。これは社会科学を軽視しているわけではなく、ひとつのチームで幅をひろげすぎても機能しないという判断による。セミナーや集中講義では、社会科学の研究者をお招きして、社会科学の成果を吸収したいと考えている。
特任スタッフの方々には、遺伝子から生態系までをカバーできる保全生態学のリーダーとして育っていただきたいと切に願っており、そのために必要な、可能な限りの支援をしたいと思う。
保全生態学の拠点形成事業だが、私や鷲谷さんは基礎研究面でもきちんと成果を出してきた。研究として面白い仕事と、現場に役に立つ仕事を両立させるのが私たちの信条である。この信条を受け継いでくれる若手研究者を求めている。