ジーコ監督の言葉

「信念を持ったチームを作りたい、一人ひとりが誇りを持てるような」
4年前にジーコ監督は、チーム作りの方針をこう表現したそうだ。報道で知る限り、ジーコ監督はこの方針を貫いた。細かな戦術指導や技術指導よりも、個々の選手に対して、個人的な技量を高め、強い気持ちを持つことを求め続けた。
敗戦の弁からもまた、同じ考えが垣間見えた。
このジーコ監督に対して、「感覚の人」であり、日本には「理論的な監督」のほうが適しているという意見がある(羽田空港サクララウンジで読んだ、今日の読売新聞3面、元ヴェルディ総監督のコメント)。
技術的に足りないところを的確に分析し、選手に具体的な注文をつける監督のほうが、当面の成果を出すという点では、確かに有利かもしれない。しかし、そのやり方では、世界のトップには通用しないだろう。
ジーコ監督は、世界の王者ブラジルのサッカーを熟知しているからこそ、選手一人ひとりの「個」を尊重し、「個」の力の重要性を説き続けた。彼が掲げた目標は、日本のサッカーがこれからめざすべき方向をしっかりと示していると思う。
ヨーロッパのサッカーチームで活躍している選手の数では、日本はオーストラリアやクロアチアに遠く及ばない。中田英ですら、レギュラーポジションを確保できていないのが実状だ。このような実績の差を考えれば、今回の結果は、順当なのである。
その日本が、ブラジルから1点を取り、王者を本気にさせた。この1点の価値は、とても大きかった。明らかに、ブラジル選手の目つきが変わり、動きが変わった。眠れるロナウドも、本領を発揮した。そして、実力の差を思い知らされた。
中田英と川口の表情には、無念さ、悔しさがあふれていた。他の選手はどうだったのだろう。日本チームの今後は、個々の選手がどれだけ敗戦の悔しさを心に留め続けて、「個」の技量を4年後までに高められるかにかかっているように思う。
「個」の技量を高めるには、国外のチームでプレイする経験が重要だろう。4年後までに、海外でレギュラーポジションを持つ選手が10人を突破すれば、決勝リーグで世界の強豪を相手に、互角に戦えるようになるだろう。実力のある若い選手には、海外のチームに積極的にチャレンジしてほしい。