宮崎吾郎新監督をつなぎ役に:ジプリ・鈴木プロデューサーの策略

水曜日で最終回を迎える「少人数ゼミ」の原稿と取り組んでいる。ネットで資料の検索をしている待ち時間に、ジプリ・鈴木プロデューサーのインタビュー「世界一早い「ゲド戦記」インタビュー 鈴木敏夫プロデューサーに聞く」を見つけた。
風の谷のナウシカ」を作る前に、「ゲド戦記」のアニメ化を交渉したことがあったのだそうな。

鈴木 実は一度交渉したのですが、うまくいきませんでした。いろいろなところからオファーがあったようですが、ル・グウィンさんはどれにもOKしなかった。ですから、あの時「ゲド戦記」をやっていたら、「ナウシカ」はなかったかも知れない。それが、3年ほど前、日本語版を翻訳した清水真砂子さんを通じて、ル・グウィンさんがその後、宮崎作品をご覧になり、彼に映画化してほしいと言っているという話が舞い込んできました。

時はちょうど「ハウル」の制作の真っ只中で、宮さん(=宮崎駿)は対応できない。そこで、吾郎さんを新監督に抜擢したそうだが、そのネライはというと・・・。

鈴木 このままいけばジブリは終わりますよ。・・・だけど、宮さんは作る方は天才でも、教えるのは決してうまくない。彼を助手席に乗せて運転すればすぐに分かります。横からいちいち口を出すから、大抵の人はノイローゼになってしまう。「魔女の宅急便」(89年)も「ハウル」も、最初は別の人が監督をやる予定だったのが、結局宮さんになってしまったように、映画作りでもそういう光景を何度か見てきた。・・・そこで思いついたのが、吾朗君の存在。彼を間に挟めばうまくいくんじゃないかと。

なんと、吾郎さんを次の世代への「つなぎ役」にしようというのである。
なかなかの策士である。この策は、有望だ。ジブリ美術館のデザインを担当した吾郎さんは、「宮さんの描くイメージで曖昧な部分があると、断固として受け付けなかった」というから、ノイローゼにならずに防波堤がつとまるだろう。しかも名アニメーターをして、「蛙の子は蛙だったんだ」とうならせるだけの力はある。
次の世代をになうのは、吾郎さん一人でなくてなくてよい。しかし、次の世代が育つ環境を作る仕事は、彼にしかできない。その判断に立った新監督起用策である。
ひょっとすると、その代役が本命に化けるかもしれない。立場が人を作る。「する人生」を選択した新監督の活躍に期待しよう。