「生物多様性・生態系研究のこれからの戦略」討論

まずは5名のパネラーによる短いコメント。先発は、Michael Donoghue。哺乳類・鳥類の絶滅種の増加のグラフに始まり、植物、両生類と続く。アパラチアのGreat Smoky Mountains国立公園では、All taxa inventory projectが進んでいるそうだ。粘菌などで新種の発見が続いているという。生物多様性インベントリーをスピードアップするために、技術革新が必要だ。次は、全世界の標本からDNAを抽出し、配列を決めるプロジェクトの紹介。
2人目は、メキシコのDirzo, 彼とPeter Ravenによる、新大陸の植物種の多様性地図の紹介。チアパス州熱帯雨林で見つかった新しい科ラカンドニア(花の中央におしべ、その周辺にめしべがある)、2cmに小型化した両生類、新種のトウモロコシ(多年生)など、メキシコのユニークな生物の紹介。最後に熱帯雨林研究における、アジアとラテンアメリカの研究者の協力の重要性を力説。
3人目は、北大の甲山さん。森林では樹木のバイオマスと種多様性に正の相関があるという現象の紹介。続いてハッベルの中立モデルの紹介。このモデルはよく知られた種の順位とアバンダンスの関係を良く説明できるが、ロトカ・ボルテラ系を一般化した時田さんの群集モデルでも、種の順位とアバンダンスの関係が説明できる。次に温暖化の下で森林帯は容易には移動できないし、移動のフロントで多様性が低下する場合があるというシミュレーション結果の紹介。最後に多様なアプローチの統合の重要性を指摘。
4人目は、Charles Perrings。生態系サービスの価値とは何か? 生態系サービスの多くは低下している。このような変化は生態系サービスの価値とどう関係するか? なぜそれは社会にとって問題か? これらの問題の解決には、経済的な条件における変化の結果を予測し、それをミチゲートする技術を提示する必要がある。
5人目は、環境研の渡辺真さん。GBIFの多様性記載プロジェクト、EID(エマージング感染症)プロジェクトの簡潔な紹介。続いて、ホットスポット生態系における長期モニタリングの例としてのメコン河プロジェクトのより詳しい紹介。