川添高志さんの講演記録
博士課程教育リーディングプログラム・第4回オールラウンド型7大学シンポジウム報告の続きです。
9月28日には、ケアプロ社長の川添高志さんをお招きして、講演をしていただきました。以下に、講演を聴きながらツイートしたメモを転載します。
今日はケアプロ社長川添高志さんのお話。「健診弱者を救うためにーケアプロの挑戦」。高校時代に看護ビジネスの道を志した。大企業でリストラされるより、自分で新しいビジネスを作って社会に貢献したい。#ケアプロ
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月29日
大学一年生の時に糖尿病患者の大変さを知った。大学三年の時に合衆国でミニッツクリニックを知った。東大病院勤務時代にワンコイン健診を閃く。500円程度でできるビジネスの可能性。自傷行為は医療活動に該当しない。ニーズはある。患者さんの生の声を聞きながら企業。#ケアプロ
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月29日
企業→起業
乗り越えるべき壁がたくさんあった。保健所の注意があり、最初の店舗は撤退。借金も増えた。原動力となったのは顧客。健診を受けた糖尿病初期患者の方が食事改善で回復。店舗がダメなら催事で実績づくり。医師への挨拶まわりもして患者を奪う事業ではないことに理解を得た。#ケアプロ
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月29日
政府にも働きかけて検体検査室制度ができた。今後はBTBモデルで無料化を目指す。たとえばパチンコ店。不健康な人が多い。病院に来ない人たちに健康を届けに行く。食品メーカーとも連携を始めた。予防医療を通じてさまざまな企業と連携。#ケアプロ
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月29日
ワンコイン健診を思いついたとき、いつかはなくなると考えた。革新的な取り組みで予防医療を拡大することを目標に設定した。今は国際医療事業部も展開している。外貨を稼ぐ産業に育てたい。#ケアプロ
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月29日
自社だけでなく、ケアプロ生態系としてミッション達成を目指す。行政、大学、業界団体、企業、株主、メディアと連携。本当に社会に必要なら、ビジネスにできる。#ケアプロ
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月29日
リーディング大学院オールラウンド型7大学(AR7)シンポジウムで、ケアプロの川添さんを交えたパネル討論が始まりました。テーマは、「社会に対して価値を提供するとは?」#ケアプロ #AR7 pic.twitter.com/8uh8DDDpR6
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月29日
今の時代について。川添さんは、SNSで多くの人が繋がっている時代。高尾さんは、何かを成し遂げる上で、多くの人の協力を得ることが必要な時代。一人でできることは限られている。#AR
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月29日
慶応大学学生Hさんの意見。好きなことをやった方がパーフォマンスが上がり、社会にも貢献できると思う。周囲がどうでもいいという意味ではなく、好きなことをやりながら、社会に貢献したい。#AR
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月29日
内山節さんの講演記録
9月28-29日には、博士課程教育リーディングプログラム・第4回オールラウンド型7大学シンポジウムを九大伊都キャンパスで開催しました。
9月28日には、哲学者内山節さんをお招きして、講演をしていただきました。以下に、講演を聴きながらツイートしたメモを転載します。
内山節さんの講演を聞いています。群馬県上野村で暮らして40年。子供の出生率は2.2, 子供たちにアンケートを取ると全員が上野村で暮らしたいと回答。世界的にも自然と接する暮らしへの回帰傾向がある。例えばフランスでは、田舎への移住者が多い。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
社会を変える出発点になる人たちは、社会的地位がある人たち。なぜ社会変革を目指すのか? それは、今までの暮らしに飽きたからだろう。子供の頃は、テレビが家に入ると嬉しかったが、今は新しい家電が入ってもワクワクしない。早いスマフォに変えても少し便利なだけ。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
都市から農村への回帰、個人主義から共同体主義への回帰、自然中心の社会への回帰。どこかで近代社会の方向性が魅力を失った。そこで2つの大きな傾向が生まれている。強い国家、経済を求める動きと、創造的な関係の中で生きようとする動き。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
従業員共同所有事業体、合衆国では労働者の5%に及ぶ。経営内容も良い。収入の問題だけでなく、働き甲斐がある。どうすれば消費者の信頼が生まれるかをみんなで考える。サンダース候補はこの動きを作ってきた人物。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
現在の都市で自然回帰、伝統回帰を実現するにはどうすればいいか? 上野村は、森の木を切る場合、森を良くするという目的がある。切った木の6割は材として使えない。ペレットにして燃料と発電用に利用している。ただしペレットストーブは40万円する。高齢者に使ってもらうために補助金。
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
フランスで移住者に移住の理由を聞くと、自然への関心に加え、みんながそれぞれの存在を認め合える社会で暮らしたい。パリで道路で倒れて死んでも、ゴミのようなもの。人間はシステムの一部であり、かけがえのない存在ではない。田舎ではお互いが役割を持って地域を作っている。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
これからの社会のあり方を問われれば、伝統回帰だと思う。近代社会が壊したものを取り戻すという意味での伝統回帰。今の時代なりの共同体のあり方を発見するという意味で、昔にそのまま戻るわけではない。昔の都市部=江戸の人たちは伊勢など遠くの自然信仰の場で繋がっていた。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
上野村の主要産業はシイタケ。森の70%は天然林。手入れして材をシイタケ栽培に使う。廃菌木をペレットに利用して循環させる。廃熱を再回収してシイタケのハウスの冷房に使う。キノコを出すには冷房が必要。全体として9割の熱効率を達成。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
砂防ダムが埋まって堰堤から水が落ちている。この水を使って小水力発電をやりたい。建設省の了解がまだだがぜひやりたい。伝統回帰だが、新しい技術はどんどん使う。発電をやろうというとお年寄りが賛成する。なぜなら、昔は小型水力発電をやっていた。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
日本の企業はお金儲けのためというより地域の課題を解決するために作られた場合が少なくない。地域電力会社は、谷の水を組み上げるためにできた。今でいうソーシャルビジネス型。昔の会社には志があった。ソーシャルビジネスは伝統回帰。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
「地域をして電力」→「地域電力」
「迎えの会社」→「昔の会社」に修正
東北では、松下村塾が世界遺産になるならISもそのうちそうなるのか? と聞かれた。東北列藩同盟150周年。明治への捉え方が他の地域とはぜんぜん違う。歴史への捉え方が分解してきている。東北には東北の生き方がある、という意味では、伝統回帰。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
フランスの田舎で感じる違いは、地域は生きている人間だけでできている。日本の伝統的社会観では、自然の意見と死者の意見を聞く。祭と年中行事を通じて自然との関係、死者を含む他者との関係を再確認する。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
修験道の人たちは3.11以後反原発に動いた。修験道では自然を敬う。原発は自然を放射能で汚した。それが許せない。これからの時代は、伝統回帰のために新しい技術を使い、人間関係も見直す時代。宗教や信仰は、明治に輸入された概念。江戸以前には自然や日常の中に祈りがあった。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
かつては人間の生きる諸要素が一体となっていた。近代ではこれらの要素がバラバラになり、経済が肥大化し、他の要素を破壊するようになった。そういう社会で暮らすことに飽きてきた時代。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
哲学者としては、主体性という概念を批判している。人は役割を持って生きている。役割を感じ取れる人間になることが大事。関係農村創造を通して社会を変革する時代。#内山節
— Tetsukazu Yahara (@TetYahara) 2017年9月28日
生物多様性観測のこれから
ハノイで開催された第10回GEOSS-APシンポジウムの3日間の日程を終えました。昨日は、生物多様性・生態系のセッションの議長を終日つとめ、今日は全体会議で2回ステージに登壇し、一度目は昨日のレポート、二度目はパネラーをつとめました。
今回は、中国が国をあげて推進するAOGROSSとの調整という課題と、生物多様性観測体制を実質的に拡充するためのLTERとの連携強化という大きな課題がありました。中国はもうすこしアグレッシブに成果を出してくるものと期待していたのですが、資金とマンパワーを投入し、衛星を使ってできることをひととおりやっているという印象を受けました。生物多様性・生態系の観測に関しては、はっきり言って、衛星でわかることはかなり限られるます。もちろん、衛星の強みはあり、それを生かすことはとても大事ですが、これからの生物多様性観測研究にイノベーションをもたらすのは、私は衛星観測ではないと考えています。
中国の科学は、いまや日本よりお金もマンパワーもあって、その点では勢いがあります。でも現状では、アイデアで勝負すれば日本に強みがある領域は多いように思います。いずれは、中国のぶあつい研究者層の中から、すごいアイデアを出してくる人材が生まれるでしょうから、そのときは本当に(良い意味で)脅威になると思います。
石川智士さんのエリア・ケイパビリティに関する実践をかねた研究の話は、とても魅力的でした。プロジェクトの初期にお話をうかがったことがありますが、その後研究と実践が進み、ローカルな漁業者の収入を増やし、コンフリクトを解消しながら、モニタリングを実施するというすばらしい成果が出ています。これは日本ならではの、とてもオリジナルな研究ですね。英語の論文になっていないので、早く論文を書いてくださいとお願いしました。本を出すことに時間を割いてきたので、論文が遅れたとのことでした。
に本が紹介されています。読んでみようと思います。
Future Earthが重視するtrans-disciplinary研究のひとつの新しい形だと思いました。
ホテルに戻ってから、GEOBON本部かが届いたコンセプト論文の原稿を読んでコメントしました。生物多様性観測のこれからについて書いた論文の原稿です。遺伝的多様性のセクションについては、不正確な記述にもとづいて現状批判が書かれており、まったく納得がいきません。ひとまずコメントを戻しました。全面改訂して良ければ書き直すよ、と書いておきました。また、国別の生物多様性観測ネットワークを立ち上げるうえでの標準的なプロセスが提案されているのですが、上から枠をはめる提案で、まったく納得がいきません。We need more flexible, more participatory, and more careful approaches to develop agreements with stakeholdersというコメントを送りました。
明日から、ハノイ近郊にあるBavi国立公園に移動して、植物多様性のトランセクト調査をやります。楽しみです。
熱帯雨林ではなぜ葉が大きいか?
この問題について調べた論文が、サイエンス誌に発表されました。
葉の大きさの世界的傾向を分析した論文。私が学生のころにGivnishが先鞭をつけた研究が、世界規模のデータ解析で実を結びました。でも、地域内の葉の大きさのばらつきの方が、地域間よりも大きいんですよね。とくに熱帯雨林では、巨大な葉の樹木から、小型の葉の樹木まで、多様性が高い。なぜ同じ地域でこれほど葉の大きさがばらくつのかについては、未解明。おそらく食害と関係しているのだと思います。
九州大学共創学部がめざすもの
で紹介されているとおり、文部科学省の大学設置・学校審議会による審査の結果、九州大「共創学部」の設置が認められました。
えっ? 「共創学部」って何?
と思われた方も少なくないでしょう。私は決断科学大学院プログラムのコーディネータとして忙しくしているので、「共創学部」設置に向けてのWGには加わりませんでしたが、構想段階で提案をしたことがあります。その提案とは、Future Earthという新しい科学を軸に据え、持続可能な開発目標(SDGs)達成をになうグローバル人材を養成する学部にしてはどうかというものです。私は「地球未来学部」という名前のほうが、英語にしたときに国際的にアピールできて良いと思ったのですが、説明を受けた文部科学省の担当官が、えっ? Future Earthって何? と言ったとか言わなかったとか、その事の真偽は問わないことにして、ともかくまだFuture Earthの知名度が低く、SDGsも今ほど知られていなかったという状況の中で設置準備が進みました。その結果、「共創学部」という学部名になったのですが、「共創」は、Future Earthが重視しているCo-designの訳です。科学者が社会のさまざまなステークホルダーと協力して、社会的問題解決に貢献する新しい科学を発展させようというFuture Earthのビジョンをあらわした表現です。
上にリンクした九州大学ウェブページには、
「大規模地球変動、生物多様性の減少、宗教・民族対立など、人類は今、地球的・人類的とも言える諸課題に直面しています。こうした問題の多くは、種々の要因が複雑に絡まりあって生じているために、一つの学問体系だけでは、根本的な解決に結びつけることが困難です。」
と書かれています。この文章は、Future Earthの状況認識そのものです。「生物多様性の減少」も入っていて、まるで私が書いた文章のようですね。
というわけで、私の理解では、「共創学部」がめざすビジョンは、上記の私の提案にかなり近いものだと思います。
「共創学部」は、九大全学のさまざまな学部の協力で作られるので、強いビジョンを前面に出すというのはむつかしく、そのために「共創学部」というややあいまいな学部名になったのだと思いますが、その「建学の精神」は、Future Earthや持続可能な開発目標(SDGs)に深く関係しています。
実際に学部の教育が動き出すと、この性格はさらに鮮明になっていくだろうと予想しています。
というわけで、「共創学部」に関心をお持ちの方には、その背景にある文理融合型の新しい科学について知るために、3月に私が出版した「決断科学のすすめ 持続可能な未来に向けて社会をどうすれば変えられるか?」を一読されることをお勧めします。高校生にも読めるように、わかりやすく書きました。コラムでスター・ウォーズやももクロをとりあげていますが、スター・ウォーズの話は5.3でとりあげる神話学研究の伏線ですし、ももクロの話題は、6.2 どうすればリーダーはメンバーを幸せにできるか? に関係しています。ぜひご一読ください。
第一部 人間の科学:人間とはどんな動物なのか?
第1章 進化的思考−人間と社会の理解の礎
1.1 生命の進化に学ぶイノベーションの原理
1.2 人類はどうやって暴力を減らしてきたのか
1.3 人類はどうやって自由を手にいれたのか
1.4 今の日本には「遊び」が足りない!
1.5 学力の意味−試験は何を選んでいるか?
コラム1:誰もがスター・ウォーズに心奪われる必然的理由 魅せる物語の共通点
第2章 リーダーシップ
2.1 「優れたリーダー」はなぜ少ないのか?
2.2 リーダーのあなたにビジョンと情熱はあるか?
2.3 「リーダー脳」は手抜きしない! 科学的思考の鍛え方
2.4 答えを導く「発想力」を手に入れる!
2.5 リーダーに必要な本当の思考力 正解のない問題を考える力とは?
コラム2:王道プロジェクトマネジメントが実を結んだももクロ主演『幕が上がる』
第3章 決断を科学する
3.1 運が左右する世界で成功する秘訣とは?
3.2 なぜ男性は美女の誘惑に弱いのか? 決断を支える理性と直感の役割
3.3 悲しみを喜びに、失敗を成功に変える方法
3.4 予測可能な失敗はどうすれば防げるか? 日本陸軍の失敗に学ぶ
3.5 日本が取り組むべき最優先課題は何か? 首相のリーダーシップと決断力
コラム3:みんな、いつか個性に代わる欠点を持っている
第二部 社会の科学:私たちはどこから来て、どこへ行くのか?
第4章 私たちはどこから来て、どこへ行くのか?
4.1 6万年前に人類が手に入れた脅威の能力とは?
4.2 過去6万年間、人類の進化は加速した
4.3 ヨーロッパの人たちはなぜ近代化の先駆者になれたのか?
4.4 一目瞭然!この200年で世界はどう変わったのか
4.5 政治的対立をどうすれば乗り越えられるか?
コラム4:SEALDsが浮き彫りにした「個」と「忠誠」の相克
第5章 持続可能な社会へ
5.1 日本人こそ知っておくべき熱帯林消失の現状
5.2 シカの増殖を抑えていたのはオオカミではなく人間だった
5.3 神話なき時代:近代の苦悩を私たちはどう乗り越えるか
5.4 地球の危機が生み出した国際協力
5.5 地球の未来をかけた科学者たちの挑戦
コラム5:日本とメキシコが歩んだ正反対の150年
第6章 社会をどうすれば変えられるか
6.1 どうすれば対立を乗り越えられるか?
6.2 どうすればリーダーはメンバーを幸せにできるか?
6.3 EU分裂の危機は、人間の生物学的宿命なのか?
6.4 社会主義はなぜ失敗したか? 日本国憲法のルーツをたどる
6.5 どうすれば社会的ジレンマを克服できるか? 社会は災害を超えて逞しくなる
違いを認め合う社会へ
クリオダイナミクス(歴史動力学)
Peter Turchinが作ったこのサイトを知らずにいた。彼の研究の足取りを追うのに役立つ。