ももクロ日産ライブDVD夏のばか騒ぎ2013

【前原から箱崎に向かう車中にて】決断科学センター開設シンポジウムを終えて、少し時間にゆとりができたので、昨夜は衝動買いしたDVDを見て過ごしました。ももクロについては、社会現象として興味を持ち、ウォッチャーを続けてきましたが、DVDを買ってしまっては、ファンではないと言い張るのはむつかしいですね。あまり好みではなかった黄色い声にもだいぶ慣れてしまいました。最近では、仕事で疲れて、ちょっと気分転換をするときに、平原綾香いきものがかりよりも、ももクロを聞くことが多くなっています。
ももクロのどこが良いのか。言い尽くされたことですが、第一の魅力はその全力のパーフォーマンスでしょう。AKBだってPerfumeだって全力だ、とも良く言われることですが、ももクロの場合、「全力度」が桁違いに高い。ほとんどアスリートですね。スポーツ選手が全力でプレイしている試合を見ているような、躍動感・爽快感・達成感があります。第二の魅力は、その笑顔でしょう。ライブ中だけでなく、リハーサルでも楽屋でも、いつも笑顔を絶やさない。彼女たちは、ももクロとしての生活を心から楽しんでいる。「一生懸命やるって、楽しいよね」(あーりん)という生き方を実践している。本人たちが全力で楽しんでいるので、見ている側も自然に楽しくなります。第三の魅力は、壁を乗り越えながら成長していくという青春群像ドラマ(「友情・努力・勝利」のストーリー)を作り続けている点ですね。ビラ配りをしながらの路上ライブに始まり、ヤマダ電機の店舗での全国「どさまわり」ツアー、人気が出てきてさぁこれからというときのメンバー(あかりん)脱退というピンチを乗り越えて、ついに紅白歌合戦出場という目標を達成するまでのドラマは、そのまま映画にできそうです。そして、その続編を今も「制作」し続けている。ライブなどでサプライズとして次の壁が発表され、それをメンバーの5人が乗り越えるというドラマをファンに対して次々に見せていく。しかも、モノノフと呼ばれるファンは、そのドラマの目撃者・参加者として、壁を乗り越える感動を共有できる。5人のメンバーは、実際にすごく成長しています。心も体も、歌と踊りの技術も。その成長を見るのは、楽しいですね。若い世代だけでなく、親の世代がももクロにはまるのは、子供の成長を見守る親心が刺激されるからでしょう。
このような成長の結果、5人のメンバーは、ファンの間で「奇跡の5人」と呼ばれる、すばらしい個性を身に着けました。この個性は、身体的なものではなく、人間性にもとづくものです。女性アイドルのキラーアイテムである水着を封印し、人間的な個性を伸ばすことで5人を育てた運営チームの人材育成術は見事です。その結果、5人がそれぞれ違った個性で輝いています。モノノフの「推し」(ファンの人気)も見事に5分しており、5人の個性がいかに異なるかを象徴しています。この個性の原石はもちろん本人たちが持っていたのですが、運営チームのすぐれた人材養成力によって、見事に磨かれました。
もうひとつ、特記すべきなのは、モノノフと呼ばれるファンの間に独特の文化や倫理観が共有されている点でしょう。自己中心的にならずにみんなが楽しめるように応援するとか、アウェイのコンサートではももクロ以外の出演者も全力で応援するなど、「ももクロのファンとして恥ずかしくないように」ふるまうことが、モノノフのモラルになっています。ももクロ側も、このようなモノノフひとりひとりに支えられて自分たちがあるという気持ち、ファンへのリスペクトをしっかりと持っています。鶴瓶師匠が「らしく、ぶらず」という表現で絶賛したももクロ側の謙虚さをファン側がしっかり受け止めて、ももクロとモノノフの間に、精神的な連帯感が醸成されています。
さて、そのももクロにとって、夏の日産ライブは、紅白の次の目標である「国立競技場ライブ」に向けての重要なステップでした。会場の規模で言えば「国立競技場」よりやや大きい日産スタジアムで、6万人規模のコンサートを成功させることが果たしてできるのか?「国立競技場」の夢を実現するために、まず越えなければならない壁として設定されたのが、日産スタジアムでのライブでした。
DVDを見た感想は、ももクロらしい、突き抜けたライブでした。グラウンド部分をそのままに空けて、広いグラウンドを走り回りながら歌うなんてことをやったのは、史上初でしょう。それに加えて100m走をやったり、サッカーをやったり。極めつけは、アンコール曲のひとつ、コノウタ。5人が5色のテープを持ってグラウンドを走りながら歌い、グラウンドにテープで星を描きました。走りながら歌っても、きちんと歌えていました。すごいですねえ。歌声を楽しむ音楽というよりも、スポーツと音楽の融合。これはもう、新しいジャンルと言っていいでしょう。
コノウタは、まだ無名時代に、ライブの終盤でももかの声が出なくなり、ももかのパートの歌詞「自分の限界に立ち止まってしまったとき」をみんながカバーし、そのあと「このウタ歌ったらいつのまにか 笑顔こぼれてた 魔法みたいだね」をあーりんが笑顔で歌ったという、伝説的エピソードがある曲。YouTubeでその動画を見たことがありますが、そのころはまだ持久力も歌唱力も不足していて、とにかく若さだけで突っ走っているという印象でした。当時に比べれば、持久力も歌唱力も伸びましたね。3時間をこえるライブの終盤で、走りながら歌っても息が切れていないし、音程も声も安定していて、安心して聴けました。
3月に「国立競技場」の夢をかなえるももクロ。その先にどんな新しい夢を描くのでしょうか。楽しみです。