カンボジア調査を終えて

日曜日に帰国したあと、あわただしい一週間が終わった。さすがに、ブログを更新する時間がとれなかった。
カンボジアでは、ボコー国立公園で8日間、ココンの森林プロットで2日間の野外調査を実施し、計6か所で100m×5mのトランセクト内の植物種をすべて記録し、採集した。高さ4m以上の木については、全個体について胸高直径と樹高を記録した。ボコー国立公園に関しては、昨年12月の調査結果とあわせて、8地点での調査データがとれた。標高の最低点は230m、最高点は1000m。東南アジア熱帯で、230mから1000mにかけての森林植生の勾配が観察できる場所は、今では数えるほどしかないだろう。その意味でも貴重な場所だ。また、以前にも書いたが、ボコー国立公園は、テーブル型の山地である。ギアナ高地ほどの標高はないが、800m〜1000mの標高にテーブル状の台地がひろがり、その距離は南北100kmに及ぶ。いま調査しているのは、車でアクセスできる南斜面と台地の南端だけ。広大な台地には、まさに手つかずの熱帯林がひろがっている。
カンボジアの植物についての知識も増えたので、高さ4m以上の木については、8地点の種の同定が8割程度完了した。標高1000mのトランセクト1では、64種のうち12種が固有種だ。これら12種のうち5種は、今回の調査で新種と判断された。最終的な結論を下すにはもうすこし検討が必要だが、ほぼ間違いない。これら12種に加え、未同定種が9種あるので、新種はさらに増えるかもしれない。樹木でこれほど多くの新種が見つかるのは、いまではきわめて珍しい。非常に固有性の高い場所が、十分に調査されていなかったのである。
この固有性の高い森林を伐採して、立派な道路が作られ、海が展望できる台地の南端には、カジノつきの立派なホテルが開業した。調査期間中に国王生誕を祝う祝日があり、山頂部にはたくさんの観光客が訪れていた。まだゴミ箱もトイレも整備されていない。土壌が浅い場所に発達した湿地にはゴミが散乱し、用を足している人もしばしば見かけた。この湿地にも固有種が何種も生育しており、さらに新種もあるようだ。
開発がさらに進む前に、実効性のある保全対策をとりたいものだ。今回の調査結果をできるだけ早くまとめて、保全にむけての提案文書を作る予定だ。