今度は愛妻家+ゼロの焦点

フランクフルト空港に午後5時過ぎ(日本時間午前1時すぎ)につき、入国審査のあと、1時間ほど論文審査に時間を使ったが、さすがに眠くて集中力が途切れてきた。いま、日本時間で深夜3時12分である。
7時05分福岡発成田行に乗るために5時に起きたので、かれこれ20時間は起きている。シベリア上空の機内では、講演用のパワーポイントを作り、少し本を読んだあと、映画を2本見たので、寝ていない。
この年度末は、「アバター」、「インビクタス」など、観たい作品がいくつもあったのだが、映画館に足を運ぶ余裕がまったくなかった。「今度は愛妻家」も観たいと思っていた作品のひとつ。シベリア上空でようやく観ることができた。
失ってみてはじめて身近な人の大切さがわかるというテーマは何度も描かれてきたものだが、この作品のストーリーはなかなかユニークだ。脚本もよく練られている。最後は死んでしまうのだろうという予想は、間違いとは言えないものも、意外な形で裏切られた。最後に二人が心を通わせて抱きあうシーンには心が熱くなった。この映画を観るなら、これ以上は知らずに観るほうが良い。
薬師丸ひろ子が素敵だ。「三丁目の夕日」のお母さん役には、「薬師丸ひろ子がお母さん役か」という一種の喪失感を味わったが、今回は薬師丸ひろ子がとても魅力的な表情でヒロインを演じている。トヨエツも、ダメ亭主役を好演。はまり役と言ってよいだろう。
ゼロの焦点」は、戦後を時代背景にした松本清張原作の社会派推理小説の映画化。中谷美紀に期待して観たが、期待をうわまわる熱演だ。いまや、日本を代表する演技派女優と言っても過言ではないだろう。
敗戦後の動乱期には、過去を隠し、めまぐるしく変化する時代をひらすら生きぬいた人たちが少なくなかったことだろう。時代の成功者となるために懸命に生きたものの、悲劇的な運命にもてあそばれた人物群像を清張は描いた。清張の作品がいまなお映画化されるのは、一方では時代をこえた人間の心性を描いているからであり、また他方では戦後という時代が現代に生きる我々にとってなおその重要性を失っていないからだろう。
※日本時間6:50分、nH Berlin-Alexanderplatzホテル(http://www.nh-hotels.de/nh/de/hotels/deutschland/berlin/nh-berlin-alexanderplatz.html)にチェックイン。空港で書いた記事をアップロード。