保全生態学を支える5つの要素

yahara2010-02-10

右の図は、グローバルCOE「アジア保全生態学」合同シンポジウムの基調講演で最後に使ったスライドであり、アジア保全生態学を展開するうえでの5つの要素を図式化したものである。図では細かくて見えづらいと思うが、以下のような訳語を使っている。
工学:Technology
理学:Curiosity
農学:Agriculture
情報科学:Informatics
人文社会科学:Humanity
言うまでもなく、Curiosityは意訳だ。しかし、Scienceと訳しても、日本語の「理学」の意味とは違ってしまう。日本の「理学」に近い英語表現に、blue skyというのがあるらしい。しかし、この表現も私にはしっくりこない。人文科学をThe Humanitiesと表現するのにならって、理学をThe Curiositiesと表現してはどうだろうか。
この訳の是非はともかく、保全生態学という「使命の科学」(mission-oriented science)でも、Curiosityを研究の核に据えたい、という私の思いが右図にはこめられている。
生物多様性の価値を生態系サービスではかる考え方が普及し、COP10の次期戦略計画文書でもこの考え方が取り入れられている。しかし私は、生物多様性の価値をすべて「サービス」という視点で評価することに、どうしても違和感を抱いてしまう。私にとって生物多様性は、何よりもCuriosityの対象なのだ。それを「文化的サービス」と言われても、しっくりこない。この概念的な問題については、Dan Faithらと英語のopinion paperを書いて投稿している。その審査結果が戻り、現在改訂中である。
私が第一著者になって書いた"Genetic diversity assessments in the century of genome science"も審査結果が戻った。2人の審査委員ともに、かなり好意的な評価とコメントを返してくれた。
これらの改訂をしなければならないのだが、その前に、試験の採点をして成績を出し、修士論文の原稿(英語)にも対応しなければならない。
幸い明日は休日(=仕事に集中できる日)。